本剤の有効成分は、ボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素であるため、使用上の注意を熟読した上で、用法及び用量を厳守し、眉間の表情皺及び目尻の表情皺以外には使用しないこと。ミオクローヌス性ジストニー、脳性麻痺及び内転型の攣縮性発声障害の患者で、ボトックス注用による治療中に因果関係を否定できない死亡例の報告がある。[8.1参照]
本剤を使用する場合は、講習を受けた医師で、本剤の安全性及び有効性を十分理解し、高度な解剖学的知識及び本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師が行うこと。
頸部関連筋へのボトックス注用の投与により、呼吸困難があらわれることがある。ボトックス注用による治療中に因果関係を完全に否定できない死亡例の報告がある。呼吸障害、嚥下障害等頸部関連筋に関する副作用があらわれるおそれがある。嚥下障害から嚥下性肺炎を引き起こし、また、投与部近位への拡散により呼吸機能低下に至ったとする報告がある。[11.1.3参照]
眼瞼痙攣患者に、ボトックス注用を1回投与量として100単位を投与し、投与筋以外の遠隔筋に対する影響と考えられる呼吸困難及び筋無力症が発現したという報告がある。[8.6、9.1.4、13.1、15.2.2参照]
全身性の神経筋接合部の障害をもつ患者(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症等)[本剤は筋弛緩作用を有するため、病態を悪化させる可能性がある。]
妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦[8.2.5、9.4.1、9.5、9.6、15.1.3、15.2.1参照]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
他のボツリヌス毒素製剤にて治療中の患者[7.6、10.1参照]
65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺
<眉間の表情皺>
通常、65歳未満の成人にはA型ボツリヌス毒素として合計10〜20単位を左右の皺眉筋に各2部位(合計4部位)及び鼻根筋1部位に均等に分割して筋肉内注射する。なお、症状再発の場合には再投与することができるが、3ヵ月以内の再投与は避けること。
<注射部位>
(図1)
<目尻の表情皺>
通常、65歳未満の成人にはA型ボツリヌス毒素として合計12〜24単位を左右の眼輪筋の外側に各3部位(合計6部位)に均等に分割して筋肉内注射する。目尻の表情皺が外眼角の上下にある場合は図2のように投与する。目尻の表情皺が外眼角の下方にある場合は図3のように投与する。なお、症状再発の場合には再投与することができるが、3ヵ月以内の再投与は避けること。
<注射部位>
(図2)
(図3)
眉間の表情皺及び目尻の表情皺以外の適応に対して本剤を絶対に使用しないこと。
これら以外の適応には安全性が確立していないので絶対使用しないこと[1.1参照]。
本剤の投与に際しては、患者に次の事項について文書を用いてよく説明し、文書による同意を得た後、使用する。
本剤の有効成分はボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素である。
本剤の投与は対症療法であり、効果は通常3〜4ヵ月で消失し、投与を繰り返す必要がある。
本剤の投与を長期間繰り返した場合、中和抗体の産生により、効果が認められなくなることがある。
本剤投与後、3〜4ヵ月の間に呼吸困難、脱力感等の体調の変化があらわれた場合には、直ちに医師に申し出る。
妊娠する可能性のある女性は、投与中及び最終投与後2回の月経を経るまでは避妊する。[2.2、9.4.1、9.5、15.1.3、15.2.1参照]
男性は、投与中及び最終投与後少なくとも3ヵ月は避妊する。[9.4.2参照]
他の医療施設でボツリヌス毒素の投与を受けている場合には、治療対象疾患及び投与日を必ず申し出る。
本剤投与後、抗体が産生されることにより、耐性が生じる可能性がある。効果の減弱がみられる場合には、抗体検査を実施する。抗体産生がみられない場合は、追加投与することができる。抗体が産生された場合には、投与を中止すること。
本剤が眼筋に作用することによって複視があらわれることがあるので、投与部位に十分注意し、慎重に投与すること。
本剤は、低用量でも閉瞼不全等の副作用発現がみられることがあるので、観察を十分に行いながら慎重に投与すること。
ボツリヌス毒素の投与により、投与筋以外の遠隔筋に対する影響と考えられる副作用があらわれることがあり、嚥下障害、肺炎、重度の衰弱等に伴う死亡例も報告されている。[1.4、9.1.4、13.1、15.2.2参照]
本剤投与後、脱力感、筋力低下、めまい、視力低下があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 慢性の呼吸器障害のある患者
本剤の投与により、病態を悪化させる可能性がある。
9.1.2 重篤な筋力低下あるいは萎縮がある患者
本剤の投与により、症状を悪化させる可能性がある。
9.1.3 閉塞隅角緑内障のある患者又はその素因(狭隅角等)のある患者
本剤はアセチルコリンの放出抑制作用を有するため、症状を悪化させる可能性がある。
9.1.4 神経学的障害のある患者
嚥下困難等を有する患者、痙縮患者等では投与筋以外の遠隔筋に対する影響と考えられる副作用のリスクが増加するため特に注意すること。[1.4、8.6、13.1、15.2.2参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性は、投与中及び最終投与後2回の月経を経るまでは避妊する。[2.2、8.2.5、9.5、15.1.3、15.2.1参照]
男性は、投与中及び最終投与後少なくとも3ヵ月は避妊する。精子形成期間に投与されることを避けるため。[8.2.6参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。外国において、ボトックス注用を投与された患者で胎児死亡が報告されており、また、本剤は動物実験で妊娠及び胎児への影響が認められている。[2.2、8.2.5、9.4.1、15.1.3、15.2.1参照]
9.6 授乳婦
投与しないこと。[2.2参照]
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
眉間の表情皺及び目尻の表情皺を対象とした本剤の海外臨床試験において、65歳以上の高齢者では65歳未満の非高齢者よりも有効性が低く、有害事象発現率は高くなることが認められている。[5.参照]
13.1 症状
投与部位及び周辺部位に過剰な薬理反応である脱力、筋肉麻痺等の局所性の副作用があらわれることがある。症状や兆候は投与直後にあらわれないこともある。また、外国において、投与筋以外の遠隔筋に対する影響が疑われる眼瞼下垂、構語障害、嚥下障害、呼吸困難、筋無力症等が報告されている。[1.4、8.6、9.1.4、15.2.2参照]
13.2 処置
必要に応じて入院を考慮すること。
投与直後の場合には抗毒素の投与を検討してもよいが、治療上の有益性と危険性を慎重に判断すること。なお、既にボツリヌス中毒症状(全身性の脱力及び筋肉麻痺など)が発現した時点での抗毒素投与は、無効である。
14.1 薬剤調製時の注意
本剤1バイアルは日局生理食塩液を用いて溶解する。投与する液量が多い場合には目的とする筋肉以外の部位へ拡散するおそれがあるため、各投与部位への投与容量は0.1mLを超えないこと。
溶解液の量(日局生理食塩液) | 溶解後のボツリヌス毒素濃度 |
1.25mL | 4.0単位/0.1mL |
2.5mL | 2.0単位/0.1mL |
バイアルの陰圧が保たれていない場合は使用しないこと。そのバイアルに0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄すること。
変性するので、泡立ちや激しい撹拌を避けること。
保存剤を含んでいないので、調製後は速やかに使用する。なお、調製後は冷凍しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
適用部位の筋肉内にのみ注射すること。
14.3 廃棄時の注意
処置後、残った薬液は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄する。また、薬液の触れた器具等は同様に0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄する。
14.4 汚染時の注意
本剤が飛散した場合はすべて拭き取る。
(1)溶解前の場合は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液をしみ込ませた吸収性素材で拭き、乾かす。
(2)溶解後の場合は、吸収性素材で拭き取った後に、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で拭き、乾かす。
本剤が皮膚に付着した場合は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で5分洗い、水で洗い流す。
本剤が眼に入った場合は、水で洗い流す。
15.1 臨床使用に基づく情報
因果関係は不明であるが、本剤投与後不整脈、心筋梗塞等の心血管系障害があらわれることがあり、致命的な転帰に至る例も報告されている。これらの症例には、心臓疾患等の危険因子を有していた症例も多く含まれていた。
外国において、因果関係が明らかでないものの、ボトックス注用による治療中に視神経萎縮が生じ、視力が低下した症例の報告があるので、本剤投与時に視力検査を実施することが望ましい。
外国において、妊娠初期にボトックス注用500単位を投与された患者で、胎児の死亡が報告されている。[2.2、8.2.5、9.4.1、9.5、15.2.1参照]
15.2 非臨床試験に基づく情報
ラットにおける交配前投与では、本剤の筋弛緩作用による後肢麻痺に伴う二次的な影響であると考えられる妊娠率、受胎率及び授胎率の低下が、器官形成期投与では、胎児体重の減少がみられた。また、マウスにおける器官形成期の間欠投与による試験において、骨化数の減少がみられた。[2.2、8.2.5、9.4.1、9.5、15.1.3参照]
動物実験(ラット及びサル)により、本剤投与部位以外の遠隔の筋において、筋萎縮や筋重量減少等の障害が発生したとの報告がある。[1.4、8.6、9.1.4、13.1参照]
本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
他のボツリヌス毒素製剤[2.4、7.6参照] | 過剰な筋弛緩があらわれることがあり、呼吸困難、嚥下障害等を発現するリスクが高まるおそれがあるため、本剤と他のボツリヌス毒素製剤の同時投与は避けること。 | 本剤及びこれらの薬剤は、ともに筋弛緩作用を有するため作用が増強されるおそれがある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
筋弛緩剤ツボクラリン塩化物塩酸塩水和物ダントロレンナトリウム水和物等 | 閉瞼不全、頸部筋脱力等の過剰な筋弛緩があらわれるおそれがある。嚥下障害の発現が高まるおそれがある。 | 筋弛緩作用が増強されることがある。併用薬の抗コリン作用による口渇、嚥下困難等が出現するため、嚥下障害が増強されることがある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
筋弛緩作用を有する薬剤スペクチノマイシン塩酸塩水和物アミノグリコシド系抗生物質ゲンタマイシン硫酸塩、フラジオマイシン硫酸塩等ポリペプチド系抗生物質ポリミキシンB硫酸塩等テトラサイクリン系抗生物質リンコマイシン系抗生物質抗痙縮剤バクロフェン等抗コリン剤ブチルスコポラミン臭化物、トリヘキシフェニジル塩酸塩等ベンゾジアゼピン系薬剤及び類薬ジアゼパム、エチゾラム等ベンザミド系薬剤チアプリド塩酸塩、スルピリド等 | 閉瞼不全、頸部筋脱力等の過剰な筋弛緩があらわれるおそれがある。嚥下障害の発現が高まるおそれがある。 | 筋弛緩作用が増強されることがある。併用薬の抗コリン作用による口渇、嚥下困難等が出現するため、嚥下障害が増強されることがある。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー、血清病(頻度不明)
本剤の投与に際しては、これらの症状の発現に備えること。
また、本剤投与後、悪心等の体調の変化がないか、患者の状態を十分観察し、異常がないことを確認すること。呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、発疹等の症状が認められた場合には投与を中止し、血圧の維持、体液の補充管理、気道の確保等の適切な処置を行うこと。
11.1.2 眼障害(頻度不明)
重篤な角膜露出、持続性上皮欠損、角膜潰瘍、角膜穿孔の報告があるので、兎眼、閉瞼不全等があらわれた場合には、眼球の乾燥を避けるため人工涙液等の点眼剤を投与するなど適切な処置を行うこと。
11.1.3 嚥下障害(頻度不明)、呼吸障害(0.02%)
嚥下障害から嚥下性肺炎を来し、重篤な呼吸困難に至ったとする報告がある。また、ボトックス注用の投与部近位への拡散により呼吸機能低下があらわれることがある。初回及び2回目の投与後1、2週間は嚥下障害、声質の変化、呼吸困難等の発現に特に留意するとともに、嚥下障害や呼吸障害の発現が認められた場合には、適切な処置を行うこと。[1.3参照]
11.1.4 痙攣発作(頻度不明)
痙攣発作あるいはその再発が報告されている。痙攣発作の素因のある患者に投与する場合には特に注意すること。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
過剰な筋弛緩作用 | 眼瞼下垂 | 兎眼、顔面麻痺、局所性筋力低下(頸部筋脱力、口角下垂等) | 眼瞼外反、眼瞼内反、閉瞼不全 |
眼 | − | 複視、霧視(感)、羞明、眼脂、流涙、眼痛 | 眼の刺激、斜視、結膜炎、眼の乾燥感、角膜炎、角膜糜爛、視力低下、眼瞼浮腫 |
皮膚 | − | 発疹、そう痒感、紅斑、脱毛(睫毛眉毛脱落を含む) | 乾癬様皮疹、多形紅斑 |
注射部位 | − | 注射部腫脹、注射部出血斑、注射部熱感、注射部位疼痛 | 注射部ひきつり感、注射部感染、近隣筋の疼痛及び緊張亢進 |
血液 | − | 白血球減少 | 血小板減少 |
消化器 | − | 嘔気、下痢、口内乾燥 | 嚥下障害、食欲不振、嘔吐、腹痛 |
精神神経系 | 頭痛 | めまい、失神、感覚異常 | 神経根障害、しびれ感 |
その他 | − | 顔面痛、発熱、CK上昇、感冒様症状 | 脱力(感)、倦怠(感)、耳鳴、聴力低下、発汗、脱神経性萎縮/筋萎縮、筋肉痛、肝機能検査異常 |
ボトックスビスタ注用50単位
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