<効能共通>
本剤の有効成分は、ボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素であるため、使用上の注意を熟読した上で、用法及び用量を厳守し、
以外には使用しないこと。ミオクローヌス性ジストニーの患者で、本剤による治療中に因果関係を否定できない死亡例の報告がある。[8.1参照]
<眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、重度の原発性腋窩多汗症>
講習を受けた医師で、本剤の安全性及び有効性を十分理解し、本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師が投与を行うこと。
<
講習を受けた医師で、本剤の安全性及び有効性を十分理解し、高度な解剖学的知識、筋電図測定技術及び本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師が投与を行うこと。
本剤による治療中に因果関係を完全に否定できない死亡例の報告がある。痙性斜頸、上肢痙縮、痙攣性発声障害患者では、特に呼吸障害、嚥下障害等頸部関連筋に関する副作用があらわれるおそれがある。
<過活動膀胱、神経因性膀胱>
講習を受けた医師で、本剤の安全性及び有効性を十分理解し、高度な解剖学的知識、膀胱鏡を用いた本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師が投与を行うこと。
<痙性斜頸、痙攣性発声障害>
頸部関連筋への投与により、呼吸困難があらわれることがある。嚥下障害から嚥下性肺炎を引き起こし、また、投与部近位への拡散により呼吸機能低下に至ったとする報告がある。[8.2.9、11.1.3参照]
<眼瞼痙攣>
1回投与量として100単位を投与し、投与筋以外の遠隔筋に対する影響と考えられる呼吸困難及び筋無力症が発現したという報告がある。[8.4、9.1.4、13.1.2、15.2.2参照]
<神経因性膀胱>
自律神経異常反射を来しやすい背景を有する患者には、緊急時に十分対応できる医療施設において、全身麻酔や血圧モニタリングを実施できる環境の下、本剤を投与すること。[7.29、9.1.5参照]
<効能共通>
全身性の神経筋接合部の障害をもつ患者(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症等)[本剤は筋弛緩作用を有するため、病態を悪化させる可能性がある。]
妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦[8.2.5、9.4.1、9.5、9.6、15.1.3、15.2.1参照]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
<痙性斜頸>
高度の呼吸機能障害のある患者[本剤の投与により、病態を悪化させる可能性がある。]
<過活動膀胱、神経因性膀胱>
尿路感染症を有する患者及び導尿を日常的に実施していない尿閉を有する患者[本剤の投与により、病態を悪化させる可能性がある。]
<眼瞼痙攣>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として初回1.25〜2.5単位/部位を、1眼あたり眼輪筋6部位の筋肉内に注射する。また、眼輪筋切除術施行後の患者に投与する場合には、筋電計を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。効果は通常3〜4ヵ月間持続するが、症状再発の場合には再投与する。ただし、投与間隔は8週以上とすること。また、再投与は初回投与量の2倍までの用量を用いることができるが、本剤の薬理作用である筋麻痺作用が予想以上に強く発現した結果とみられる閉瞼不全、眼瞼下垂等の副作用があらわれた場合には、再投与時の用量を適宜減量すること。
また、1ヵ月間に累積で45単位を超える投与は避けること。
<注射部位>
<片側顔面痙攣>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を痙攣筋
※に筋肉内注射する。痙攣筋が複数ある場合は、分割して投与する。
・初回投与の場合には合計で10単位を投与する。
・初回投与後4週間観察し、効果が不十分な場合には、さらに追加で合計20単位を上限として投与することができる。
・症状再発の場合には、合計で30単位を上限として再投与することができる。ただし、投与間隔は8週以上とすること。
※痙攣筋:眼輪筋、皺眉筋、前頭筋、口輪筋、大頬骨筋、小頬骨筋、笑筋、広頸筋、オトガイ筋等
<痙性斜頸>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を緊張筋
※に筋肉内注射する。緊張筋が複数ある場合は、分割して投与する。
・初回投与の場合には合計で30〜60単位を投与する。
・初回投与後4週間観察し、効果が不十分な場合には、さらに追加で合計180単位を上限として投与することができる。
・症状再発の場合には、合計で240単位を上限として再投与することができる。ただし、投与間隔は8週以上とすること。
※緊張筋:胸鎖乳突筋、僧帽筋、板状筋、斜角筋、僧帽筋前縁、肩甲挙筋、傍脊柱筋、広頸筋等
<上肢痙縮>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として複数の緊張筋
※に合計400単位を分割して筋肉内注射する。1回あたりの
また、再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
※緊張筋:上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、深指屈筋、浅指屈筋、長母指屈筋、母指内転筋等
<下肢痙縮>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として複数の緊張筋
※に合計300単位を分割して筋肉内注射する。1回あたりの
また、再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
※緊張筋:腓腹筋(内側頭、外側頭)、ヒラメ筋、後脛骨筋等
<重度の原発性腋窩多汗症>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として片腋窩あたり50単位を、複数の部位(10〜15ヵ所)に1〜2cm間隔で皮内投与する。再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は16週以上とすること。
<斜視>
通常、成人及び12歳以上の小児にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を外眼筋に筋肉内注射する。
・初回投与
(1)上下斜視の場合
上直筋又は下直筋に1.25〜2.5単位
(2)20プリズムジオプトリー未満の水平斜視の場合
内直筋又は外直筋に1.25〜2.5単位
(3)20〜50プリズムジオプトリーの水平斜視の場合
内直筋又は外直筋に2.5〜5.0単位
(4)1ヵ月以上持続する外転神経麻痺の場合
内直筋に1.25〜2.5単位
・初回投与後4週間観察し、効果が不十分な場合には、さらに追加で初回投与量の2倍までの用量を上限として投与することができる。
・前回の効果が減弱した場合には、過去に投与された1回投与量の2倍までの用量を上限として再投与することができる。ただし、投与間隔は12週以上とすること。
・1回の投与における1つの筋あたりの投与量は10単位を超えないこと。
<痙攣性発声障害>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を内喉頭筋に筋肉内注射する。
・内転型痙攣性発声障害
初回投与
片側の甲状披裂筋に2.5単位を投与する。
再投与
前回の効果が減弱した場合には、片側又は両側の甲状披裂筋に再投与することができる。ただし、投与間隔は12週以上とすること。なお、症状に応じて投与量を適宜増減することができるが、片側あたり2.5単位を超えないこと。
・外転型痙攣性発声障害
初回投与
片側の後輪状披裂筋に5.0単位を投与する。
再投与
前回の効果が減弱した場合には、片側の後輪状披裂筋に再投与することができる。ただし、投与間隔は12週以上とすること。なお、症状に応じて投与量を適宜増減することができるが、5.0単位を超えないこと。
<既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として100単位を排尿筋に分割して注射する。再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
<既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁>
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として200単位を排尿筋に分割して注射する。再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
<効能共通>
本剤は
の適応のみに使用する製剤のため、眉間又は目尻の表情皺に対しては、ボトックスビスタ注用50単位を用いること。これら以外の適応には安全性が確立していないので絶対使用しないこと。[1.1参照]
本剤の投与に際しては、患者又はそれに代わる適切な者に、次の事項について文書を用いてよく説明し、文書による同意を得た後、使用する。
本剤の有効成分は、ボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素である。
本剤の投与は対症療法であり、その効果は、
では通常3〜4ヵ月、重度の原発性腋窩多汗症では通常4〜9ヵ月、過活動膀胱では通常4〜8ヵ月、神経因性膀胱では通常8〜11ヵ月で消失し、投与を繰り返す必要がある。
本剤の投与を長期間繰り返した場合、中和抗体の産生により、効果が認められなくなることがある。[8.3参照]
他の医療施設でボツリヌス毒素の投与を受けている場合には、治療対象疾患及び投与日を必ず申し出る。[10.2参照]
妊娠する可能性のある女性は、
投与中及び最終投与後2回の月経を経るまでは
避妊する
。[2.2、9.4.1、9.5、15.1.3、15.2.1参照]
男性は、
投与中及び最終投与後少なくとも3ヵ月
避妊する
。[9.4.2参照]
日常生活を制限されていた患者は、本剤投与後、過度の筋収縮を伴う労作を避け、活動を徐々に再開する。
本剤投与後、3〜4ヵ月の間に呼吸困難、脱力感等の体調の変化があらわれた場合には、直ちに医師に申し出る。
痙性斜頸及び痙攣性発声障害に対する本剤の、特に初回及び2回目の投与後1、2週間は、嚥下障害、声質の変化、息苦しい等の発現に留意するとともに、発現が認められた場合には、直ちに専門医の診療を受ける。[1.5、11.1.3参照]
痙性斜頸に対する本剤投与後、姿勢の変化により今まで緊張していなかった筋が緊張することがある。[7.10参照]
上肢痙縮及び下肢痙縮患者においては、本剤投与に伴う活動性の上昇や筋力バランスの変化により、転倒等が起こりやすくなる可能性がある。
過活動膀胱及び神経因性膀胱患者においては、本剤投与により、残尿量が増加し導尿が必要になる場合がある。また、本剤投与により尿閉及び尿路感染が発現することがある。本剤投与後に排尿困難、混濁尿、頻尿、排尿痛、発熱、悪寒、血尿等の症状があらわれた場合には、直ちに医師に申し出る。[11.1.5、11.1.6参照]
脊髄損傷等を有する神経因性膀胱患者においては、本剤投与により筋力低下等が発現した場合、日常生活動作の制限が増大する可能性がある。
本剤投与後、抗体が産生されることにより、耐性が生じる可能性がある。効果の減弱がみられる場合には、抗体検査を実施する。抗体産生がみられない場合は、追加投与することができる。抗体が産生された場合には、投与を中止すること。[8.2.3参照]
ボツリヌス毒素の投与により、投与部位以外の遠隔筋に対する影響と考えられる副作用があらわれることがあり、嚥下障害、肺炎、重度の衰弱等に伴う死亡例も報告されている。[1.6、9.1.4、13.1.2、15.2.2参照]
本剤投与後、脱力感、筋力低下、めまい、視力低下があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
本剤はできるだけ少量(6.用法及び用量の初回投与量又は承認用量の下限を参照)から投与を開始することが望ましい。なお、疾患の重症度に応じて高用量を投与しても、効果は期待できない場合がある。
<眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、斜視>
本剤を眼輪筋又は外眼筋へ投与する場合は、以下の点に注意すること。
・投与時ごとに視力検査を実施することが望ましい。[15.1.2参照]
・眼科的観察を併せて実施し、特に眼球を傷害しないように眼球の保護に十分注意すること。また、経過観察を十分に行い、眼科的異常があらわれた場合には、直ちに精密検査を受けさせること。
本剤の眼瞼深部への投与により、本剤が眼筋に作用することによって複視があらわれることがあるので、投与部位に十分注意し、慎重に投与すること。
本剤は、低用量でも閉瞼不全等の副作用発現がみられることがあるので、観察を十分に行いながら慎重に投与すること。
<斜視>
外眼筋への投与により、眼窩に針を刺入することによって球後出血が生じ、網膜循環に障害を来すおそれがあるので、適切な検査や眼窩減圧の処置を行うことが望ましい。また、眼球を針で穿通した場合には、検眼鏡による診断を行うこと。
<痙攣性発声障害>
抗血小板薬及び抗凝固薬を投与中の患者においては、喉頭への注射によって出血や血腫が生じ、誤嚥や呼吸困難につながるおそれがあることから、本剤投与前に抗血小板薬及び抗凝固薬の休薬等を行うこと。
<過活動膀胱、神経因性膀胱>
本剤を投与する場合は、尿路感染の発現に注意し、適切な感染対策を講じること。[11.1.6参照]
抗血小板薬及び抗凝固薬を投与中の患者においては、排尿筋への注射による出血のリスクが増大することから、本剤投与前に抗血小板薬及び抗凝固薬の休薬等を行うこと。
本剤の投与手技により血尿、排尿困難、膀胱痛等が発現するおそれがある。本剤投与後は患者の状態を十分に観察し、症状があらわれた場合には適切に処置すること。
導尿を実施していない患者においては、投与後2週間以内に残尿量を測定し、その後は必要に応じて投与後12週までを目安に残尿量測定を定期的に行うこと。[11.1.5参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
<効能共通>
9.1.1 慢性の呼吸器障害のある患者
本剤の投与により、病態を悪化させる可能性がある。
9.1.2 重篤な筋力低下あるいは萎縮がある患者
本剤の投与により、症状を悪化させる可能性がある。
9.1.3 閉塞隅角緑内障のある患者又はその素因(狭隅角等)のある患者
本剤はアセチルコリンの放出抑制作用を有するため、症状を悪化させる可能性がある。
9.1.4 神経学的障害のある患者
嚥下困難等を有する患者、脳性麻痺等重度の障害を有する小児患者、痙縮患者等では、投与部位以外の遠隔筋に対する影響と考えられる副作用のリスクが増加するため特に注意すること。[1.6、8.4、13.1.2、15.2.2参照]
<神経因性膀胱>
9.1.5 自律神経異常反射を来しやすい背景を有する患者
本剤の投与手技に起因する自律神経異常反射を来すおそれがあることから、直ちに適切な処置を行えるようにしておくこと。[1.7、7.29参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性
は、
投与中及び最終投与後2回の月経を経るまでは避妊する
。[2.2、8.2.5、9.5、15.1.3、15.2.1参照]
男性
は、
投与中及び最終投与後少なくとも3ヵ月
避妊する
。精子形成期間に投与されることを避けるため。[8.2.6参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。外国において、本剤を投与された患者で胎児死亡が報告されており、また、動物実験で妊娠及び胎児への影響が認められている。[2.2、8.2.5、9.4.1、15.1.3、15.2.1参照]
9.6 授乳婦
投与しないこと。[2.2参照]
9.7 小児等
2歳以上の
適応では、小児を対象とする有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。[
参照]
小児において本剤による治療中に死亡例が報告されており、その中には重度の神経筋疾患、嚥下困難、嚥下性肺炎、痙攣発作、心臓疾患等の危険因子を有する症例も認められた。四肢麻痺の患者、経管栄養補給を受けている患者又は嚥下性肺炎や肺疾患の既往を有する患者等、重度の障害を有する小児患者に投与する場合には、観察を十分に行うこと。
9.8 高齢者
少量(6.用法及び用量の初回投与量又は承認用量の下限を参照)から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に、生理機能が低下している。
13.1 症状
投与部位及び周辺部位に過剰な薬理反応である脱力、筋肉麻痺等の局所性の副作用があらわれることがある。症状や兆候は投与直後にあらわれないこともある。
外国において、投与筋以外の遠隔筋に対する影響が疑われる眼瞼下垂、構音障害、嚥下障害、呼吸困難、筋無力症等が報告されている。[1.6、8.4、9.1.4、15.2.2参照]
13.2 処置
必要に応じて入院を考慮すること。
投与直後の場合には抗毒素の投与を検討してもよいが、治療上の有益性と危険性を慎重に判断すること。なお、既にボツリヌス中毒症状(全身性の脱力及び筋肉麻痺など)が発現した時点での抗毒素投与は、無効である。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 調製方法
(1)本剤1バイアルは日局生理食塩液を用いて溶解する。
溶解液の量(日局生理食塩液) | 溶解後のボツリヌス毒素濃度 | |
50単位 | 1.0mL | 5.0単位/0.1mL |
2.0mL | 2.5単位/0.1mL | |
4.0mL | 1.25単位/0.1mL | |
5.0mL | 1.0単位/0.1mL | |
100単位 | 1.0mL | 10.0単位/0.1mL |
2.0mL | 5.0単位/0.1mL | |
4.0mL | 2.5単位/0.1mL | |
8.0mL | 1.25単位/0.1mL | |
10.0mL | 1.0単位/0.1mL |
神経因性膀胱への投与に際し、本剤200単位を30mLの薬液として調製する場合は、[1]100単位バイアル2本をそれぞれ6mLの日局生理食塩液で溶解し、[2]合計12mLの薬液を3本の10mLシリンジに4mLずつ吸引した後、[3]各シリンジに追加で6mLの日局生理食塩液を吸引する。3本のシリンジはそれぞれ薬液10mL(約67単位)を含有する。[7.31参照]
(2)バイアルの陰圧が保たれていない場合は使用しないこと。そのバイアルに0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄すること。
(3)変性するので、泡立ちや激しい撹拌を避けること。
(4)保存剤を含んでいないので、調製後は速やかに使用する。なお、調製後は冷凍しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 投与部位
<
(1)用法及び用量に示すとおり、適用部位の筋肉内にのみ注射すること。特に、眼輪筋切除術施行後の患者に投与する場合は、より正確に目標とする部位を同定するため、必ず筋電計を用いて筋活動電位を確認すること。
<重度の原発性腋窩多汗症>
(2)用法及び用量に示すとおり、皮内にのみ注射すること。
14.2.2 投与時期
<痙攣性発声障害>
全身麻酔の必要な手術を予定している患者においては、本剤の作用による声帯の弛緩が周術期の誤嚥等のリスクを増加させる可能性があるため、手術が終了してから本剤を投与することが望ましい。
14.3 廃棄時の注意
処置後、残った薬液は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄する。また、薬液の触れた器具等は同様に0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄する。
14.4 汚染時の注意
本剤が飛散した場合はすべて拭き取る。
(1)溶解前の場合は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液をしみ込ませた吸収性素材で拭き、乾かす。
(2)溶解後の場合は、吸収性素材で拭き取った後に、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で拭き、乾かす。
本剤が皮膚に付着した場合は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で洗い、水で洗い流す。
本剤が眼に入った場合は、水で洗い流す。
15.1 臨床使用に基づく情報
因果関係は不明であるが、本剤投与後不整脈、心筋梗塞等の心血管系障害があらわれることがあり、致命的な転帰に至る例も報告されている。これらの症例には、心臓疾患等の危険因子を有していた症例も多く含まれていた。
外国において、因果関係が明らかでないものの、本剤による治療中に視神経萎縮が生じ、視力が低下した症例の報告があるので、本剤投与時に視力検査を実施することが望ましい。[8.7参照]
外国において、妊娠初期に本剤500単位を投与された患者で、胎児の死亡が報告されている。[2.2、8.2.5、9.4.1、9.5、15.2.1参照]
15.2 非臨床試験に基づく情報
ラットにおける交配前投与では、本剤の筋弛緩作用による後肢麻痺に伴う二次的な影響であると考えられる妊娠率、受胎率及び授胎率の低下が、器官形成期投与では、胎児体重の減少がみられた。また、マウスにおける器官形成期の間欠投与による試験において、骨化数の減少がみられた。[2.2、8.2.5、9.4.1、9.5、15.1.3参照]
動物実験(ラット及びサル)により、本剤投与部位以外の遠隔の筋において、筋萎縮や筋重量減少等の障害が発生したとの報告がある。[1.6、8.4、9.1.4、13.1.2参照]
膀胱周囲臓器への誤投与による影響を検討したサルの毒性試験において、本剤を前立腺部尿道及び直腸並びに前立腺内
注)に投与した際に膀胱結石が用量依存的に認められた
。
注)過活動膀胱及び神経因性膀胱に対して承認されている本剤の用法は「排尿筋に注射」である。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
筋弛緩剤ツボクラリン塩化物塩酸塩水和物ダントロレンナトリウム水和物等 | 閉瞼不全、頸部筋脱力等の過剰な筋弛緩があらわれるおそれがある。嚥下障害の発現が高まるおそれがある。 | 筋弛緩作用が増強されることがある。併用薬の抗コリン作用による口渇、嚥下困難等が出現するため、嚥下障害が増強されることがある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
筋弛緩作用を有する薬剤スペクチノマイシン塩酸塩水和物アミノグリコシド系抗生物質ゲンタマイシン硫酸塩、フラジオマイシン硫酸塩等ポリペプチド系抗生物質ポリミキシンB硫酸塩等テトラサイクリン系抗生物質リンコマイシン系抗生物質抗痙縮剤バクロフェン等抗コリン剤ブチルスコポラミン臭化物、トリヘキシフェニジル塩酸塩等ベンゾジアゼピン系薬剤及び類薬ジアゼパム、エチゾラム等ベンザミド系薬剤チアプリド塩酸塩、スルピリド等 | 閉瞼不全、頸部筋脱力等の過剰な筋弛緩があらわれるおそれがある。嚥下障害の発現が高まるおそれがある。 | 筋弛緩作用が増強されることがある。併用薬の抗コリン作用による口渇、嚥下困難等が出現するため、嚥下障害が増強されることがある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
他のボツリヌス毒素製剤[7.3、7.4、8.2.4参照] | 過剰な筋弛緩があらわれることがあり、呼吸困難、嚥下障害等を発現するリスクが高まるおそれがあるため、本剤と他のボツリヌス毒素製剤の同時投与は原則として避けること。 | 本剤及びこれらの薬剤は、ともに筋弛緩作用を有するため作用が増強されるおそれがある。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー、血清病(0.01%)
本剤投与後、悪心等の体調の変化がないか、患者の状態を十分観察し、異常がないことを確認すること。呼吸困難、全身潮紅、血管性浮腫、発疹等の症状が認められた場合には投与を中止し、血圧の維持、体液の補充管理、気道の確保等の適切な処置を行うこと。
11.1.2 眼障害(0.34%)
重篤な角膜露出、持続性上皮欠損、角膜潰瘍、角膜穿孔の報告があるので、兎眼、閉瞼不全等があらわれた場合には、眼球の乾燥を避けるため人工涙液等の点眼剤を投与するなど適切な処置を行うこと。
11.1.3 嚥下障害(0.75%)、呼吸障害(0.03%)
嚥下障害から嚥下性肺炎を来し、重篤な呼吸困難に至ったとする報告がある。また、本剤の投与により呼吸機能低下があらわれることがある。初回及び2回目の投与後1、2週間は嚥下障害、声質の変化、呼吸困難等の発現に特に留意すること。[1.5、8.2.9参照]
11.1.4 痙攣発作(0.01%未満)
痙攣発作あるいはその再発が報告されている。痙攣発作の素因のある患者に投与する場合には特に注意すること。なお、小児では大部分が脳性麻痺患者からの報告であった。
11.1.5 尿閉(0.05%)
排尿困難等の症状があらわれた場合には、必要に応じて導尿を実施すること。[8.2.12、8.15参照]
11.1.6 尿路感染(0.06%)
混濁尿、頻尿、排尿痛、発熱、悪寒、血尿等の症状があらわれた場合には、適切な処置を行うこと。[8.2.12、8.12参照]
発現頻度には使用成績調査の結果を含む。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
0.5〜2%未満 | 0.5%未満 | 頻度不明 | |
過剰な筋弛緩作用 | 兎眼、閉瞼不全、局所性筋力低下(頸部筋脱力、口角下垂等)、眼瞼下垂、顔面麻痺 | 眼瞼内反、筋力低下 | 眼瞼外反 |
眼 | 流涙 | 眼の乾燥感、複視、角膜糜爛、霧視(感)、角膜炎、結膜炎、眼痛、視力低下、眼脂、羞明、斜視、眼運動障害、眼の刺激 | 眼球後出血、眼の貫通性外傷、ホームズ・アディー瞳孔、硝子体出血 |
皮膚 | 発疹、そう痒感、脱毛(睫毛眉毛脱落を含む)、皮膚炎、多形紅斑 | 乾癬様皮疹、斑状出血、皮膚の異臭、皮下結節 | |
注射部位 | 注射部出血斑注1)、注射部腫脹、注射部疼痛、近隣筋の疼痛及び緊張亢進、注射部ひきつり感、注射部熱感、注射部不快感、注射部感染、注射部位過敏反応 |
気胸注2) | |
血液 | 白血球減少、血小板減少 | ||
呼吸器 | 肺炎、感冒様症状、呼吸不全、発声障害、咳嗽、誤嚥 | 上気道性喘鳴 | |
消化器 | 嚥下障害 | 食欲不振、嘔気、嘔吐、口内乾燥、下痢、便秘、腹痛 | レッチング |
精神神経系 | 頭痛、感覚鈍麻、めまい、失神、感覚異常、傾眠、神経根障害、不眠症 | 不器用、運動低下 | |
筋骨格 | 筋緊張亢進、筋痛、四肢痛、筋痙縮、関節痛 | 弾発指、滑液包炎 | |
泌尿器 | 排尿困難、残尿量増加、頻尿 | 細菌尿、膀胱憩室、尿失禁 | |
その他 | 肝機能検査値異常、倦怠(感)、脱力(感)、CK上昇、発熱、発汗注3)、耳鳴、構語障害、ほてり、転倒、挫傷、歩行障害、ウイルス感染、疼痛、関節脱臼 | 聴力低下、耳感染、起立性低血圧、脱神経性萎縮/筋肉萎縮、疲労 |
発現頻度には使用成績調査の結果を含む。
注1)眼瞼痙攣患者において、眼瞼の軟部組織に斑状出血が起こる可能性があるため、注射直後に注射部位を軽く押さえることで斑状出血を軽減できる。
注2)投与手技に関連した気胸が報告されているので、肺(特に肺尖部)に近い部位に投与する場合には注意すること。
注3)原発性腋窩多汗症患者において、腋窩部以外からの発汗が増加することがある。
ボトックス注用50単位 32439円/瓶
ボトックス注用100単位 57446円/瓶
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使いやすさ
投稿日: 2015/03/07 参考率: 98%(113人/115人)
内科/50代/処方経験あり