1.1 従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤の代替として本剤を投与しないこと。[8.1参照]
1.2 本剤の投与にあたっては、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
1.3 投与に際しては、骨髄抑制、重度の下痢等の重篤な副作用が起こることがあり、ときに致命的な経過をたどることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。[8.2、11.1.1、11.1.2参照]
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 骨髄機能抑制のある患者
骨髄機能抑制が増悪して重症感染症等を併発し、致命的となることがある。
2.3 感染症を合併している患者
感染症が増悪し、致命的となることがある。
2.4 重度の下痢のある患者
下痢が増悪して脱水、電解質異常、循環不全を起こし、致命的となることがある。
2.5 腸管麻痺、腸閉塞のある患者
腸管からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。
2.6 間質性肺疾患又は肺線維症の患者
症状が増悪し、致命的となることがある。
2.7 多量の腹水、胸水のある患者
重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。
2.8 黄疸のある患者
重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。
2.9 アタザナビル硫酸塩を投与中の患者[10.1参照]
がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵癌
フルオロウラシル及びレボホリナートとの併用において、通常、成人にはイリノテカンとして1回70mg/m2(体表面積)を90分かけて2週間間隔で点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
8.1 本剤はイリノテカン塩酸塩水和物をリポソームに封入した製剤であることから、本剤の有効性、安全性、薬物動態等は従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と異なる。本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤の代替として使用しないこと。また、本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と同様の用法・用量で投与しないこと。[1.1参照]
8.2 骨髄機能抑制、重度の下痢等の重篤な副作用があらわれることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。投与後2週間は特に頻回に末梢血液検査を行うなど、極めて注意深く観察すること。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延することがあるので、投与は慎重に行うこと。[1.3、7.3、11.1.1、11.1.2参照]
8.3 間質性肺疾患があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認、及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。[11.1.9参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 グルクロン酸抱合異常の患者
Gilbert症候群のようなグルクロン酸抱合異常の患者においては、本剤の代謝が遅延することにより骨髄機能抑制等の重篤な副作用が発現する可能性が高いため、十分注意すること。
9.1.2
本剤の活性代謝物(SN-38)の主な代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によるSN-38の代謝が減少することにより、重篤な副作用(特に好中球減少)が発現する可能性が高いため、十分注意すること。[7.2、17.1.3参照]
9.2 腎機能障害患者
腎障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の重度の腎機能障害患者は臨床試験では除外されている。
9.3 肝機能障害患者
肝障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。血清総ビリルビン値が基準範囲上限値を超える患者、AST値及びALT値が基準範囲上限値の2.5倍を超える(肝転移がある場合は基準範囲上限値の5倍を超える)患者は臨床試験では除外されている。
9.4 生殖能を有する者
9.4.1 性腺に対する影響を考慮すること。[15.2.1参照]
9.4.2 妊娠可能な女性患者には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。[9.5参照]
9.4.3 パートナーが妊娠する可能性のある男性患者には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。[15.2.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。イリノテカン塩酸塩水和物の動物実験(ラット・ウサギ)で催奇形性作用が報告されている。[9.4.2参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。イリノテカン塩酸塩水和物の動物実験(ラット)で乳汁移行が報告されている。
9.7 小児等
小児を対象とした臨床試験は実施していない。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は細胞毒性を有するため、取り扱う際には手袋、ゴーグル及び防護服を着用することが望ましい。薬液が皮膚に付着した場合は直ちに石鹸及び流水でよく洗い流すこと。薬液が粘膜に付着した場合は、流水でよく洗い流すこと。
14.1.2 無菌的にバイアルから本剤の必要量を採取し、500mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、穏やかに反転させて混和する。
14.1.3 本剤は、混和後速やかに投与すること。やむをえず保存する場合は、遮光した上で、室温で保存する場合には6時間以内、2〜8℃(凍結させないこと)で保存する場合には24時間以内に投与すること。また、未使用残液は廃棄すること。
14.2 薬剤投与時の注意
静脈内投与に際し、投与部位の炎症の徴候をモニタリングし、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与すること。薬液が血管外に漏れた場合は、生理食塩液や滅菌水で洗い流し、患部を氷で冷やすこと。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 イヌを用いた反復投与毒性試験において、雌雄生殖器の萎縮が認められている。[9.4.1参照]
15.2.2 イリノテカン塩酸塩水和物は、ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及びマウス骨髄細胞を用いた小核試験において、遺伝毒性が報告されている。[9.4.3参照]
凍結しないこと。外箱開封後は遮光して保存すること。
イリノテカンは、主にカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に変換されるが、CYP3A4により一部無毒化される。イリノテカンの活性代謝物(SN-38)は、主に肝のUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合体(SN-38G)となる。[16.4参照]
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| アタザナビル硫酸塩(レイアタッツ)[2.9参照] | 骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。 | UGT1A1阻害作用のあるアタザナビル硫酸塩との併用により、イリノテカンの代謝が遅延することが考えられる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 他の抗悪性腫瘍剤、放射線照射 | 骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する。 | 併用により殺細胞作用が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 末梢性筋弛緩剤スキサメトニウム塩化物水和物、ベクロニウム臭化物、ロクロニウム臭化物等 | 末梢性筋弛緩剤の作用が減弱するおそれがある。 | イリノテカン塩酸塩水和物の動物実験で筋収縮増強作用が認められている。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| CYP3A阻害剤イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル等グレープフルーツジュース | 骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する。 | CYP3Aを阻害する左記薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が阻害されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分増加し、SN-38の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| CYP3A誘導剤カルバマゼピン、フェノバルビタール、リファンピシン等セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort:セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 | 作用が減弱するおそれがある。本剤投与期間中は左記薬剤・食品との併用を避けることが望ましい。 | CYP3Aを誘導する左記薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が促進されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分減少し、SN-38の血中濃度が低下する可能性がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| ソラフェニブトシル酸塩レゴラフェニブ水和物 | 骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する。 | UGT1A1阻害作用のある左記薬剤との併用により、イリノテカン及びSN-38の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| ラパチニブトシル酸塩水和物 | 骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する。 | 機序は不明だが、ラパチニブトシル酸塩水和物との併用により、SN-38の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 骨髄機能抑制
好中球減少(44.8%)、白血球減少(35.0%)、貧血(17.8%)、血小板減少(9.2%)、発熱性好中球減少症(2.5%)、無顆粒球症(0.6%)、汎血球減少症(0.6%)等があらわれることがある。[1.3、7.3、8.2参照]
11.1.2 下痢(49.7%)
重度の下痢の持続により、脱水、電解質異常及びショック(循環不全)等をきたすことがあり、特に重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には、致命的な経過をたどることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、ロペラミド塩酸塩等の止瀉剤の投与等の適切な処置を行うこと。なお、本剤による重度の下痢として以下の2つの機序が考えられている。[1.3、7.3、8.2参照]
・早発型
本剤投与中あるいは投与直後に発現する。コリン作動性と考えられ、高度である場合もあるが多くは一過性であり、副交感神経遮断剤の投与により緩和することがある。
・遅発型
本剤投与後24時間以降に発現する。主に本剤の活性代謝物(SN-38)による腸管粘膜傷害に基づくものと考えられ、持続することがある。
11.1.3 感染症(10.4%)
敗血症(1.8%)、肺炎(0.6%)等の感染症があらわれることがある。
11.1.4 肝機能障害(11.0%)、黄疸(頻度不明)
11.1.5 Infusion reaction(4.9%)
アナフィラキシー、発疹、蕁麻疹、過敏症等を含むinfusion reactionがあらわれることがある。
11.1.6 血栓塞栓症(1.2%)
11.1.7 腸炎(1.2%)、腸閉塞(0.6%)、消化管出血(頻度不明)
11.1.8 播種性血管内凝固(頻度不明)
11.1.9 間質性肺疾患(頻度不明)[8.3参照]
11.1.10 急性腎障害(1.8%)
11.1.11 心筋梗塞・狭心症(頻度不明)
11.1.12 心室性期外収縮(頻度不明)
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 50%以上 | 5〜50%未満 | 5%未満 | |
| 心臓障害 | 頻脈、心電図QT延長 | ||
| 耳および迷路障害 | 回転性めまい | ||
| 眼障害 | 眼脂、眼刺激 | ||
| 胃腸障害 | 悪心 | 嘔吐、口内炎、便秘、腹痛 | 口内乾燥、腹部膨満、胃食道逆流性疾患、膵炎、腹部不快感、消化不良、白色便、痔核、脂肪便、地図状舌 |
| 一般・全身障害および投与部位の状態 | 無力症、発熱 | 悪寒、末梢性浮腫、易刺激性 | |
| 代謝および栄養障害 | 食欲減退、低カリウム血症 | 脱水、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、高血糖、低クロール血症、低リン酸血症、高ナトリウム血症、低タンパク血症 | |
| 筋骨格系および結合組織障害 | 筋肉痛、関節痛、筋痙縮、筋力低下、筋骨格硬直 | ||
| 神経系障害 | 味覚異常 | 浮動性めまい、末梢性ニューロパチー、頭痛、灼熱感、異常感覚、傾眠 | |
| 精神障害 | 不安、うつ病、不眠症 | ||
| 腎および尿路障害 | 頻尿 | ||
| 呼吸器、胸郭および縦隔障害 | しゃっくり、呼吸困難、発声障害、鼻出血 | ||
| 皮膚および皮下組織障害 | 脱毛症 | 皮膚色素過剰、手掌・足底発赤知覚不全症候群、皮膚乾燥、爪の異常、多汗症、紅斑、光線過敏性反応 | |
| 血管障害 | ほてり、静脈炎、高血圧、低血圧 | ||
| その他 | 体重減少 | C-反応性蛋白増加 |
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