1.1 本剤の投与は、緊急時に十分対応できる医療施設において白血病の治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとで行うこと。
1.2 本剤の使用にあたっては、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与を開始すること。
1.3 本剤は強い骨髄抑制作用を有する薬剤であり、本剤に関連したと考えられる死亡例が認められている。
本剤を投与したすべての患者に強い骨髄抑制が起こり、その結果致命的な感染症(敗血症、肺炎等)及び出血(脳出血、消化管出血等)等を引き起こすことがあるので、下記につき十分注意すること。[8.1-8.3、9.1.1、9.1.2、11.1.2参照]
1.3.1 本剤の投与後に認められる骨髄抑制は重篤かつ長期に持続することもあるので、感染予防や致命的な出血の予防に十分な対策を講じること。
1.3.2 重篤な感染症を合併している患者には投与しないこと。[2.3参照]
1.3.3 本剤投与時に前治療又は他の薬剤による骨髄抑制を起こしている患者では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断されるとき以外は投与しないこと。
1.3.4 投与開始後は、頻回に血液検査を行うなど患者の状態を注意深く観察し、重篤な感染症又は出血等を引き起こした場合は投与を中止し、必要な処置を行うこと。
1.4 本剤は心筋障害作用を有するため、慎重に患者を選択し、本剤の投与が適切と判断される症例にのみ投与し、下記の患者には投与しないこと。
1.4.1 心機能異常又はその既往歴のある患者[2.1参照]
1.4.2 他のアントラサイクリン系薬剤等、心毒性を有する薬剤による前治療が限界量(塩酸ダウノルビシンでは総投与量が25mg/kg、塩酸エピルビシンでは総投与量がアントラサイクリン系薬剤未治療例で900mg/m2等)に達している患者[2.4、8.6、9.1.4、10.2、11.1.1参照]
1.5 本剤に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者には投与しないこと。[2.2参照]
2.1 心機能異常又はその既往歴のある患者[心筋障害があらわれることがある。][1.4.1参照]
2.2 本剤に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者[1.5参照]
2.3 重篤な感染症を合併している患者[1.3.2、9.1.2参照]
2.4 他のアントラサイクリン系薬剤等、心毒性を有する薬剤による前治療が限界量(塩酸ダウノルビシンでは総投与量が体重当り25mg/kg、塩酸エピルビシンでは総投与量がアントラサイクリン系薬剤未治療例で体表面積当り900mg/m2等)に達している患者[心筋障害が増強されるおそれがある。][1.4.2、8.6、9.1.4、11.1.1参照]
2.5 重篤な肝障害のある患者[9.3.1参照]
2.6 重篤な腎障害のある患者[9.2.1参照]
急性骨髄性白血病(慢性骨髄性白血病の急性転化を含む)
1バイアル5mg(力価)に5mLの日局注射用水を加え溶解する。
通常、成人にはイダルビシン塩酸塩として12mg(力価)/m2(体表面積)を1日1回、3日間連日静脈内投与する。骨髄機能が回復するまで休薬し、投与を繰り返す。
8.1 本剤の強い骨髄抑制により、白血球数及び免疫能が低下し、易感染状態になるので、感染予防として無菌状態に近い状況下(無菌室、簡易無菌室等)で治療を行うなど十分な対策を講じること。[1.3、11.1.2参照]
8.2 投与開始後は、頻回に血液検査を行うなど患者の状態を注意深く観察すること。[1.3、11.1.2参照]
8.3 本剤の投与の継続に際しては、末梢血液及び骨髄の検査を行うなど患者の状態を十分観察し、効果と副作用を評価し、減量、休薬、中止等適切な対応をとること。使用が長期間にわたると骨髄抑制が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので投与は慎重に行うこと。[1.3、11.1.2参照]
8.4 治療中、白血球数及び免疫能低下のため高度な口内炎が長期にわたることがあるので、口腔内殺菌液等による頻回の含嗽により口腔内を清潔に保ち、口内炎の発現及び悪化を防御すること。[11.1.3、17.1.1参照]
8.5 心筋障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、適宜臨床検査(心機能検査、肝機能・腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。[11.1.1参照]
8.6 アントラサイクリン系薬剤では一般に蓄積性の心毒性が発現するので、総投与量に注意して投与すること。ただし、これまでの臨床試験において、本剤の総投与量と心毒性発現の間に一定の傾向が認められていないため、本剤の投与限界量を明確に規定することはできない。なお、外国添付文書では以下のように記載されている。
・平均累積量93mg/m2を投与した患者では、心機能に有意な変化は示されなかった。〔イギリス〕
・本剤の総投与量は、120mg/m2を超えてはならない。(他のアントラサイクリン系薬剤による前治療のある場合は、それまでのダウノルビシン、又はドキソルビシンの用量の1/4が加算される)〔ドイツ〕
また、他のアントラサイクリン系薬剤等心毒性を有する薬剤による前治療のある患者、心臓部あるいは縦隔に放射線療法を受けた患者では、特に注意すること。[1.4.2、2.4、9.1.4、9.7.2、10.2、11.1.1参照]
8.7 本剤の投与により免疫機能が低下している患者に、生ワクチン又は弱毒生ワクチンを接種すると、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、本剤投与中にこれらのワクチンを接種しないこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 骨髄抑制のある患者
出血傾向が発現又は増悪し、致命的となることがあるので、本剤投与時に前治療又は他の薬剤による骨髄抑制を起こしている患者では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断されるとき以外は投与しないこと。[1.3参照]
9.1.2 感染症を合併している患者
感染症をコントロールしてから投与すること。感染症が発現又は増悪し、致命的となることがあるので、重篤な感染症を合併している患者には投与しないこと。[1.3、2.3参照]
9.1.3 水痘患者
致命的な全身障害があらわれることがある。
9.1.4 他のアントラサイクリン系薬剤等心毒性を有する薬剤による前治療歴のある患者(他のアントラサイクリン系薬剤等心毒性を有する薬剤による前治療が限界量に達している患者を除く)[1.4.2、2.4、8.6、10.2、11.1.1参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎障害のある患者
投与しないこと。本剤の血中からの消失が遅延するとの報告がある。[2.6、16.6.1参照]
9.2.2 腎障害のある患者(重篤な腎障害のある患者を除く)
本剤の血中からの消失が遅延するとの報告がある。[16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝障害のある患者
投与しないこと。本剤の血中からの消失が遅延するとの報告がある。[2.5、16.6.2参照]
9.3.2 肝障害のある患者(重篤な肝障害のある患者を除く)
本剤の血中からの消失が遅延するとの報告がある。[16.6.2参照]
9.4 生殖能を有する者
9.4.1 妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。[9.5参照]
9.4.2 パートナーが妊娠する可能性のある男性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。[15.2参照]
9.4.3 小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験で催奇形性(ラット:腰肋、頸肋、椎骨弓の癒合・形成不全・欠損)、胎児毒性(体重増加抑制、初期死亡胎児数の増加等)が報告されている。[9.4.1参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。
9.7 小児等
9.7.1 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。小児等に投与する場合には副作用の発現に特に注意し、慎重に投与すること。なお、使用成績調査(調査症例数1,283例)において、小児(15歳未満)での副作用発現率は100.0%(9/9例)であった。
9.7.2 乳幼児及び小児では、本剤投与後も定期的に心機能検査を実施することが望ましい。アントラサイクリン系薬剤による心毒性を起こしやすいとの報告がある。[8.6、11.1.1参照]
9.8 高齢者
用量に留意して患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。本剤は主として肝臓で代謝され、一部は腎臓から排泄されるが、高齢者では肝・腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。また、一般に高齢者では生理機能の低下に伴い、心毒性、骨髄抑制があらわれやすい。[11.1.1、11.1.2参照]
本剤を3日間で135mg/m2を投与した1例と3日間で本剤を45mg/m2と塩酸ダウノルビシン90mg/m2を投与した1例に死亡が報告されている。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は、溶解時のpHにより安定性が低下したり、他の薬剤と混合することにより沈殿を生じることがあるので、混注を避け、日局注射用水に溶解して投与すること。
14.1.2 溶解後は速やかに使用すること。調製した溶液は2〜8℃で48時間、常温で24時間は化学的に安定であるが、2〜8℃でも24時間以上保存しないことが望ましい。
14.1.3 本剤には、21G又はそれより細い針を使用すること。太い針を使用すると、ゴム栓コアが発生する可能性が高くなり、また、同一ヵ所に複数回刺した場合にも、ゴム栓コアが発生する可能性が高くなる。
14.1.4 本剤が眼や皮膚に付着した場合には直ちに水で洗浄し、適切な処置を行うこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 静脈内投与により、血管痛、静脈炎、血栓を起こすことがあるので、注射部位、注射方法等について十分注意し、注射速度をできるだけ遅くすること(5〜10分)。また、同一部位への反復投与によって血管の硬化が起こることがある。
14.2.2 静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に疼痛、灼熱感、炎症、腫脹、壊死を起こすことがあるので、点滴の側管を利用するなど、薬液が血管外に漏れないように十分に注意して投与すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
本剤の尿中排泄により尿が赤色になることがある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
ラットに静脈内投与した実験で、乳腺腫瘍が発生したとの報告がある。また、細菌を用いた復帰突然変異試験及びマウスを用いた染色体異常試験において、遺伝毒性が報告されている。[9.4.2参照]
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 潜在的に心毒性を有する抗悪性腫瘍剤アントラサイクリン系薬剤等[1.4.2、8.6、9.1.4、11.1.1参照] | これらの薬剤が過去に投与されている場合、あるいは併用療法を行う場合は、心筋障害が増強されるおそれがあるので、患者の状態を観察しながら、減量するなど用量に注意すること。 | 心筋に対する蓄積毒性が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 心臓部あるいは縦隔への放射線照射[8.6参照] | 心筋障害が増強するおそれがあるので、患者の状態を観察しながら、減量するなど用量に注意すること。 | 心筋に対する蓄積毒性が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 抗悪性腫瘍剤放射線照射 | 骨髄低形成の遷延及び副作用が増強するおそれがある。また、本剤と他の抗悪性腫瘍剤を併用した患者に、二次性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)が発生することがある。併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するなど用量に注意すること。 | ともに骨髄抑制作用を有する。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 心筋障害(3.9%)
心筋障害、更に心不全等があらわれることがある。[1.4.2、2.4、8.5、8.6、9.1.4、9.7.2、9.8、10.2参照]
11.1.2 骨髄抑制(頻度不明)
汎血球減少(52.8%)、血小板減少(66.5%)、顆粒球減少(66.9%)、貧血(63.5%)、出血傾向(24.6%)があらわれることがある。重篤な感染症(敗血症、肺炎等)又は出血(脳出血、消化管出血等)等を引き起こした場合は、投与を中止すること。また、必要に応じて抗菌剤の投与又は血小板輸血等適切な処置を行うこと。なお、高度な骨髄抑制の持続により、重篤な感染症(敗血症、肺炎等)や出血(脳出血、消化管出血等)等を併発し、死亡した例が報告されている。[1.3、8.1、8.2、8.3、9.8参照]
11.1.3 口内炎(22.4%)
高度な口内炎により食事摂取が困難な場合は栄養輸液投与等の適切な措置を行うこと。[8.4参照]
11.1.4 ショック(1.4%)
11.1.5 完全房室ブロック等の不整脈(2.4%)
注)使用成績調査を含む
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 20%以上 | 1〜20%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
| 心臓 | 頻脈、心電図異常 | 心膜炎 | ||
| 消化器 | 食欲不振、悪心・嘔吐、下痢 | 腹部不快感、腹痛、口腔内の疼痛、食道炎、胃炎 | 腸炎、消化管潰瘍、消化管出血 | |
| 過敏症 | 紅斑、発疹 | そう痒、蕁麻疹 | ||
| 皮膚 | 脱毛 | 色素沈着、放射線照射リコール反応 | ||
| 肝臓 | 肝障害(AST・ALT上昇、総ビリルビン上昇、Al-P上昇等) | |||
| 腎臓 | 腎障害(BUN上昇、クレアチニン上昇等) | |||
| 精神神経系 | 頭痛 | |||
| 注射部位 | 血管痛 | 静脈炎 | 血栓 | |
| その他 | 発熱 | 疼痛、胸部圧迫感 | 全身の筋肉痛 | 脱水、ほてり |
注)使用成績調査を含む
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