本剤では、放射線を照射しない製剤よりも保存に伴い上清中のカリウム濃度が増加することが認められており(「組成・性状」の項の図参照)、放射線を照射した赤血球製剤を急速輸血及び人工心肺の充填液として使用した際に一時的な心停止を起こした症例がまれに(0.1%未満)報告されている
次の点について留意して輸血療法を行うこと。
輸血について十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用すること。
輸血に際しては副作用発現時に救急処置をとれる準備をあらかじめしておくこと(「重大な副作用及び感染症」の項参照)。
血中赤血球不足又はその機能廃絶に適する。
ろ過装置を具備した輸血用器具を用いて、静脈内に必要量を輸注する。
輸血は補充療法であって、根治的な療法ではない。
輸血は、放射線照射ガイドライン
輸血には同種免疫等による副作用
輸血を行う場合は、その必要性とともに感染症・副作用等のリスクについて、患者又はその家族等に文書にてわかりやすく説明し、同意を得ること。
本剤は、ABO血液型、Rho(D)血液型及び赤血球不規則抗体の検査を行っているが、本剤と患者血液の不適合により溶血等の副作用があらわれることがある。したがって、患者のABO血液型、D(Rho)抗原の確認及び交差適合試験を含む輸血前検査を適切に行うこと。
本剤は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)等のウイルスについての検査には適合しているが、供血者がウインドウ期等にあることによる感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合等には、患者の輸血前後の肝炎ウイルスマーカー検査あるいはHIV抗体検査等を実施し、患者の経過観察を行うこと(本項の(2)参照)
本剤の使用により、細菌等によるエンドトキシンショック、敗血症等
輸血による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)伝播が疑われる報告
血液バッグの可塑剤(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル:DEHP)が製剤中に溶出し、保存に伴い増加することが確認されているが、溶出したDEHPにより直接的健康被害が発生したとの報告は現在までにない。
放射線照射による有核血液細胞のがん化(malignant transformation)
短時間に大量輸血した場合、クエン酸による血中カルシウム濃度の低下による症状(手指のしびれ、嘔気等)、アシドーシス、凝固因子や血小板の減少・希釈に伴う出血傾向、微小凝集塊による肺毛細管の閉塞に伴う肺機能不全
また、微小凝集塊による副作用防止のためには、必要に応じて微小凝集塊除去用フィルターを使用すること。
胎児、低出生体重児、新生児、腎障害患者、高カリウム血症の患者及び急速大量輸血を必要とする患者[上清中のカリウム濃度の増加による高カリウム血症の出現・増悪をきたすことがある。]
本剤の成分に対し、ショック等の免疫学的副作用の既往歴がある患者
IgA等の血漿蛋白の欠損症のある患者[欠損蛋白に対する抗体を保有する患者では、
腎障害のある患者[アデニン、マンニトールを含有するので、腎障害を増強するおそれがある。]
本剤の過量輸血により容量負荷となり、心不全、チアノーゼ、呼吸困難、肺水腫等があらわれることがある
外観異常
外観上異常を認めた場合は使用しないこと。
他の薬剤との混注
本剤と他の薬剤との混注は避けること。
本剤の加温
本剤は2〜6℃で保存されているが、通常の輸血では加温の必要はない。ただし、急速大量輸血(24時間以内に患者の循環血液量と等量又はそれ以上の輸血をする場合)、新生児交換輸血等の場合は、体温の低下や血圧低下、不整脈等があらわれることがあるので本剤の加温が必要である
用時開封等
細菌汚染を避けるため、本剤は使用するまで輸血口を開封しないこと。また、小児等への輸血で全量を使用しなかった場合、本剤の残りを再度保存して使用しないこと。
物理的障害による溶血
細い針等の使用時に、強い力で加圧・吸引すると溶血することがあるので注意すること。特に吸引時には注意すること。
輸血用器具の目詰まり
輸血中は輸血用器具の目詰まりに注意すること。
輸血中の患者の観察
輸血中は患者の様子を適宜観察すること。少なくとも輸血開始後約5分間は患者の観察を十分に行い、約15分経過した時点で再度観察すること。
輸血単位の増加による感染症の伝播や同種免疫反応の危険性が増大するのを防止するため、実際に凝固異常を認める場合を除き、本剤と新鮮凍結血漿とを併用して、全血の代替とすべきではない。
過冷による溶血
本剤は、過冷により溶血することがあるので貯蔵時の温度管理を適正に行うこと。
患者との適合性の確認
事務的な過誤による血液型不適合輸血を防ぐために、本剤の受け渡し時、輸血準備時及び輸血実施時にそれぞれ、患者氏名(同姓同名に注意)、血液型、血液製造番号、有効期限、交差適合試験の検査結果、放射線照射の有無などについて、交差試験適合票の記載事項と輸血用血液バッグの本体及び添付伝票とを照合し、該当患者に適合しているものであることを確認すること。麻酔時など患者本人による確認ができない場合、当該患者に相違ないことを必ず複数の者により確認すること。
記録の保存
本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を使用した場合はその名称(販売名)、製造番号、使用年月日、患者の氏名・住所等を記録し、少なくとも20年間保存すること。
安定性試験
400mL由来の本剤について、長期保存試験(2〜6℃、採血後28日間)を実施した。その結果、有効期間内は安定であり、品質が維持されていることが確認された
本剤の使用により、同種免疫による赤血球、白血球、血小板、血漿蛋白等に対する抗体が産生され、溶血、ショック、過敏症等の免疫学的副作用があらわれることがある(本剤はリンパ球を不活化するために放射線照射を行っているが、その抗原性は保持されている)。
また、本剤は、問診等の検診により健康状態を確認した国内の献血者から採血し、梅毒トレポネーマ、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)及びヒトパルボウイルスB19についての血清学的検査、肝機能(ALT(GPT))検査、HBV-DNA、HCV-RNA及びHIV-RNAについての核酸増幅検査に適合した献血血液を原料としている。しかし、このような措置によっても、これら及びその他血液を介するウイルス、細菌、原虫等に感染することがある。
さらに、本剤では、放射線を照射しない製剤よりも保存に伴い上清中のカリウム濃度が増加することが認められており、本剤の使用により高カリウム血症をきたすことがある。
なお、本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないが、輸血用血液の特殊性に鑑み、目安として自発報告と推定使用患者数から算出した頻度を記載した。以下の副作用及び感染症については、本剤もしくは他の輸血用血液の報告をもとに記載した。
高カリウム血症(0.1%未満)
放射線を照射した赤血球製剤を急速輸血及び人工心肺の充填液として使用した際に高カリウム血症をきたし、一時的に心停止となった症例が報告されている
ショック、
ショック、チアノーゼ、皮膚潮紅、血管浮腫、喘鳴等の
感染症(0.1%未満)
B型、C型等の肝炎ウイルス
また、HTLV-1
呼吸障害・輸血関連急性肺障害(TRALI:transfusion related acute lung injury)
輸血中あるいは輸血後に喘鳴、低酸素血症、チアノーゼ、肺水腫、TRALI等を生じることがある。特にTRALIは輸血中あるいは輸血終了後6時間以内に、急激な肺水腫、低酸素血症、頻脈、低血圧、チアノーゼ、呼吸困難を伴う呼吸障害で、時に死亡に至ることがある。これらの症状があらわれた場合には直ちに輸血を中止し、酸素投与、呼吸管理等の適切な処置を行うこと。
輸血後紫斑病(PTP:post transfusion purpura)
輸血後約1週間経過して、急激な血小板減少、粘膜出血、血尿等があらわれることがあるので、患者の経過観察を行い、これらの症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
心機能障害・不整脈(0.1%未満)
心不全、心筋障害、心房細動・心室細動等の重篤な心機能障害や不整脈があらわれることがあるので、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には輸血を中止するなど、適切な処置を行うこと。
腎機能障害(0.1%未満)
急性腎不全等の重篤な腎機能障害があらわれることがあるので、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
肝機能障害(0.1%未満)
AST、ALTの著しい上昇を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
| 過敏症 | 蕁麻疹、発疹、発赤、そう痒感 |
| 血液 | 凝固因子や血小板の減少・希釈に伴う出血傾向※、白血球数の変動 |
| 肝・胆道系 | 黄疸、血中ビリルビンの上昇 |
| 腎臓 | 血尿、ヘモグロビン尿、BUN・クレアチニンの上昇 |
| 消化器 | 悪心、嘔吐 |
| 精神神経系 | 痙攣 |
| 呼吸器 | 微小凝集塊による肺毛細管の閉塞に伴う肺機能不全 |
| 循環器 | 血圧の上昇又は低下、頻脈又は徐脈 |
| 電解質異常 | アシドーシス※、血中カリウム濃度の上昇、クエン酸による血中カルシウム濃度の低下による症状※(手指のしびれ、嘔気等) |
| 全身状態 | 発熱、悪寒、戦慄、頭痛・胸痛その他痛み、チアノーゼ、倦怠感 |
| その他 | 鉄の沈着症※※、鉄過剰症※※ |
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