本剤の脳血栓症急性期の臨床試験において、出血性脳梗塞の発現が認められている。脳血栓症の患者に使用する場合には、臨床症状及びコンピューター断層撮影による観察を十分に行い、出血が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。[2.1、2.3、8.2、11.1.1参照]
2.1 出血している患者:頭蓋内出血、出血性脳梗塞、血小板減少性紫斑病、血管障害による出血傾向、血友病その他の凝固障害、月経期間中、手術時、消化管出血、尿路出血、喀血、流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊産婦等[出血している患者に投与した場合には止血が困難になるおそれがある。][1.、9.5.1参照]
2.2 脳塞栓又は脳塞栓のおそれがある患者(ただし、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)II型の患者を除く)[出血性脳梗塞を起こすおそれがある。]
2.3 重篤な意識障害を伴う大梗塞の患者[大梗塞の患者は出血性脳梗塞を起こすおそれがある。][1.参照]
2.4 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
○下記疾患に伴う神経症候(運動麻痺)、日常生活動作(歩行、起立、坐位保持、食事)の改善
発症後48時間以内の脳血栓症急性期(ラクネを除く)
○慢性動脈閉塞症(バージャー病・閉塞性動脈硬化症)における四肢潰瘍、安静時疼痛ならびに冷感の改善
○下記患者における血液体外循環時の灌流血液の凝固防止(血液透析)
先天性アンチトロンビンIII欠乏患者
アンチトロンビンIII低下を伴う患者
(アンチトロンビンIIIが正常の70%以下に低下し、かつ、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウムの使用では体外循環路内の凝血(残血)が改善しないと判断されたもの)
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)II型患者
○ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)II型(発症リスクのある場合を含む)における経皮的冠インターベンション施行時の血液の凝固防止
○ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)II型における血栓症の発症抑制
<脳血栓症急性期(ラクネを除く)>
通常、成人に、はじめの2日間は1日6管(アルガトロバン水和物として60mg)を適当量の輸液で希釈し、24時間かけて持続点滴静注する。その後の5日間は1回1管(アルガトロバン水和物として10mg)を適当量の輸液で希釈し1日朝夕2回、1回3時間かけて点滴静注する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。
<慢性動脈閉塞症(バージャー病・閉塞性動脈硬化症)>
通常、成人1回1管(アルガトロバン水和物として10mg)を輸液で希釈し、1日2回、1回2〜3時間かけて点滴静注する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。
<血液体外循環>
通常、成人に、体外循環開始時に1管(アルガトロバン水和物として10mg)を回路内に投与し、体外循環開始後は毎時2.5管(アルガトロバン水和物として25mg)より投与を開始する。凝固時間の延長、回路内凝血(残血)、透析効率及び透析終了時の止血状況等を指標に投与量を増減し、患者毎の投与量を決定するが、毎時0.5〜4管(アルガトロバン水和物として5〜40mg)を目安とする。
<HIT II型(発症リスクのある場合を含む)における経皮的冠インターベンション施行時の血液の凝固防止>
本剤を適当量の輸液で希釈し、通常、成人にアルガトロバン水和物として0.1mg/kgを3〜5分かけて静脈内投与し、術後4時間までアルガトロバン水和物として6μg/kg/分を目安に静脈内持続投与する。その後抗凝固療法の継続が必要な場合は、0.7μg/kg/分に減量し静脈内持続投与する。なお、持続投与量は目安であり、適切な凝固能のモニタリングにより適宜調節する。
<HIT II型における血栓症の発症抑制>
本剤を適当量の輸液で希釈し、通常、成人にアルガトロバン水和物として0.7μg/kg/分より点滴静注を開始し、持続投与する。なお、肝機能障害のある患者や出血のリスクのある患者に対しては、低用量から投与を開始すること。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を指標に投与量を増減し、患者毎の投与量を決定する。
<効能共通>
8.1 血液凝固能検査等の出血管理を十分に行いつつ使用すること。
<脳血栓症急性期(ラクネを除く)>
8.2 本剤の投与により出血性脳梗塞、脳内出血を助長する可能性があるので、臨床症状及びコンピューター断層撮影による観察を十分に行い、出血が認められた場合には直ちに投与を中止すること。[1.参照]
<HIT II型における血栓症の発症抑制>
8.3 本剤を投与する際には、血小板数、aPTT及びプロトロンビン時間(PT)等を観察しながら、出血のリスクを考慮して慎重に投与すること。[7.8-7.10参照]
8.4 本剤投与中に肝機能障害が発現した場合は、投与継続によるリスクとベネフィットを慎重に判断し、投与継続の可否を検討すること。また、投与を継続する場合は、肝機能及びPT、aPTTを頻回に検査し、観察を十分に行うこと。
<HIT II型(発症リスクのある場合を含む)における経皮的冠インターベンション施行時の血液の凝固防止>
8.5 本剤のクリアランスが低下している肝機能障害、又は出血のリスクのある患者に対する本剤の使用経験の報告はないことから、このような患者では、治療上のリスクとベネフィットを十分に勘案し、適応を検討すること。また、投与の際は十分な観察を行うこと。
<血液体外循環>
8.6 出血性病変又は出血傾向を有する患者の血液体外循環時には観察を十分に行い、出血の増悪がみられた場合には減量又は投与を中止すること。
8.7 外来透析患者では、穿刺部の止血を確認してから帰宅させること。
8.8 アンチトロンビンIII低下状態の患者では、本剤を使用することによりアンチトロンビンIIIが70%以上に回復し、体外循環路内の凝血(残血)が管理可能と判断されたときには、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウムの使用を速やかに検討し、本剤を漫然と使用しないこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 出血の可能性のある患者:消化管潰瘍、内臓の腫瘍、消化管の憩室炎、大腸炎、亜急性細菌性心内膜炎、脳出血の既往歴のある患者、血小板の減少している患者、重症高血圧症、重症糖尿病の患者、手術後の患者等
出血を起こすおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝障害のある患者
本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
9.5 妊婦
9.5.1 流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊産婦には投与しないこと。[2.1参照]
9.5.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。なお、65歳以上の高齢者における副作用発現率は、脳血栓症急性期の使用成績調査では7.8%(184/2,357例)、慢性動脈閉塞症の使用成績調査では3.4%(117/3,392例)であった。
13.1 症状
出血の危険性が増大する。
13.2 処置
出血性の合併症が発現した場合は本剤の投与を中止し、出血の原因を確認すること。本剤の抗凝固作用を中和する薬剤は知られていないので、症状に応じて、外科的止血や新鮮凍結血漿輸注など適切な処置を行うこと。
14.1 薬剤投与時の注意
本剤はそのまま静脈内に投与せずに希釈して使用すること。本剤を原液のまま投与すると、溶血を起こすおそれがある。
外箱開封後は遮光保存すること。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 抗凝固剤ヘパリン、ワルファリン等[7.11参照] | 出血傾向の増強を起こすおそれがあるので、本剤を減量するなど注意すること。 | 血液凝固作用を阻害することにより、凝固時間を延長するためと考えられる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 血栓溶解剤アルテプラーゼ、ウロキナーゼ等 | 出血傾向の増強を起こすおそれがあるので、本剤を減量するなど注意すること。 | プラスミノーゲンをプラスミンに変換させ、生成したプラスミンがフィブリンを分解し血栓を溶解するためと考えられる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| フィブリノーゲン低下作用を有する酵素製剤バトロキソビン等 | 出血傾向の増強を起こすおそれがあるので、本剤を減量するなど注意すること。 | フィブリノーゲンが低下するためと考えられる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 血小板凝集抑制作用を有する薬剤アスピリン、オザグレルナトリウム、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩、シロスタゾール、ジピリダモール等 | 〈効能共通〉出血傾向の増強を起こすおそれがあるので、本剤を減量するなど注意すること。〈HIT II型(発症リスクのある場合を含む)における経皮的冠インターベンション施行時の血液の凝固防止〉経皮的冠インターベンション施行において併用が必須とされる薬剤(アスピリン、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩等)との併用を理由に本剤を減量しないこと。 | 血小板凝集を抑制するためと考えられる。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 出血性脳梗塞(0.5%)
脳血栓症急性期の患者に使用した場合あらわれることがある。[1.参照]
11.1.2 脳出血、消化管出血(いずれも頻度不明)
11.1.3 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
蕁麻疹、血圧低下、呼吸困難等があらわれることがある。
11.1.4 劇症肝炎、肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 | 頻度不明 | |
| 血液 | 血尿、貧血(赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値の減少)、白血球増多、白血球減少、血小板減少 | 凝固時間の延長、出血 |
| 過敏症 | 皮疹(紅斑性発疹等) | そう痒、蕁麻疹 |
| 血管 | 血管痛、血管炎 | |
| 肝臓 | AST上昇、ALT上昇、ALP上昇、LDH上昇、総ビリルビン上昇 | γ-GTP上昇 |
| 腎臓 | BUN上昇 | クレアチニン上昇 |
| 消化器 | 下痢、食欲不振、腹痛 | 嘔吐 |
| その他 | 頭痛、不整脈、熱感、過換気症候群、呼吸困難、血圧上昇 | 四肢の疼痛、四肢のしびれ、ふらつき、心悸亢進、潮紅、悪寒、発熱、発汗、胸痛、血圧低下、浮腫、腫脹、倦怠感、血清総蛋白減少 |
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