2.1 本剤及び他のβ遮断剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスのある患者[アシドーシスによる心筋収縮力の抑制を増強するおそれがある。]
2.3 洞性徐脈、房室ブロック(II、III度)、洞房ブロック、洞不全症候群のある患者[これらの症状が悪化するおそれがある。]
2.4 心原性ショックの患者[心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。]
2.5 肺高血圧による右心不全のある患者[心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。]
2.6 うっ血性心不全のある患者[心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。]
2.7 未治療の褐色細胞腫
手術時の上室性頻脈性不整脈に対する緊急処置
通常、成人には1回0.1mL/kg(塩酸エスモロールとして1mg/kg)を30秒間で心電図の連続監視下に静脈内に投与する。なお、年齢、症状により適宜減量する。引き続き持続投与を行う場合は、0.9mL/kg/時(150μg/kg/分)の投与速度で持続静脈内投与を開始し、適宜投与速度を調節し、目標とする心拍数を維持する。なお、持続投与は、年齢、症状により適宜低用量から開始する。
8.1 洞性頻脈に対して本剤を投与する場合は、心筋虚血の発生及びその悪化のリスクを有する患者における心筋酸素需給バランスの維持等、頻脈処置の必要性を十分考慮し、患者の基礎疾患や合併症の内容、手術内容及びRate Pressure Product(RPP)等より、心拍数の上昇を抑える必要がある場合にのみ適用を考慮すること。[5.参照]
8.2 頻脈による心筋虚血の発生及びその悪化のリスクが通常の手術患者より高い冠動脈バイパス術施行患者等では、RPPが高くない場合(12000以下)でも本剤を必要とすることがある。
8.3 本剤による心拍数の上昇の抑制は、心筋虚血の発生及びその悪化のリスクを軽減することが期待できると考えられるが、海外では本剤使用にもかかわらず心筋虚血の重篤例が報告されている。また国内でもCK-MB(CPK-MB)の上昇例が認められており、心電図や経食道心エコーなどにより患者状態を慎重に観察すること。
8.4 本剤の投与は心電図による監視、血圧の測定などの心機能検査を行いながら慎重に行うこと。
8.5 心不全の徴候又は症状が見られた場合は本剤を直ちに中止し、適切な処置を行うこと。[11.1.1、13.2.3参照]
8.6 本剤は緊急処置を要する場合に必要な期間のみの投与にとどめること。患者の状態を十分観察し、緊急治療の必要性がなくなった場合は、漫然と継続投与しないこと。
8.7 持続投与を行う場合、単回投与に比べて低血圧及び徐脈の発現頻度が増加することから、患者状態を慎重に観察すること。
8.8 気管挿管時頻脈に対して本剤を使用する場合、血圧の低下を来しやすいため、患者の麻酔状態や循環動態を十分に観察すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血圧症の患者
心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。
9.1.2 左室収縮機能障害のある患者
心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。
9.1.3 気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者
観察を十分に行い、慎重に投与すること。症状を引き起こすおそれがある。[11.1.3参照]
9.1.4 異型狭心症の患者
症状が悪化するおそれがある。
9.1.5 低血糖症、コントロール不十分な糖尿病、長期間絶食状態の患者
低血糖からの回復が遷延するおそれがある。
9.1.6 重篤な血液疾患の患者
薬物の代謝・排泄が影響を受けるおそれがある。
9.1.7 末梢循環障害のある患者(レイノー症候群、間欠性跛行症等)
末梢循環障害が増悪するおそれがある。
9.1.8 房室ブロック(I度)のある患者
房室伝導時間が延長し、症状が悪化するおそれがある。
9.1.9 出血量の多い患者、脱水症状のある患者、血液透析を行っている患者
本剤投与により血圧低下を来すおそれがある。[11.1.5参照]
9.1.10 褐色細胞腫
他のβ遮断剤投与により急激に血圧が上昇したとの報告がある。[2.7、7.2参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害のある患者
薬物の代謝・排泄が影響を受けるおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠末期又は陣痛ないし分娩時に本剤を使用すると、胎児の徐脈を引き起こしたとの報告がある。また、動物実験(ヒツジ)において胎児移行率は低かったが、胎児の心拍数を低下させたとの報告がある。高用量持続投与時の血中代謝物濃度において子宮平滑筋のオキシトシン収縮を抑制する可能性も示唆されている(ラット)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が認められている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
次の点に注意し、少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
・一般に過度の血圧降下、高度の徐脈が起きた場合には脳梗塞等が起こるおそれがある。
・エスモロール塩酸塩の消失半減期の延長がみられることがある。
・生理機能が低下していることが多く、本剤の作用が強く発現するおそれがある。
13.1 症状
本剤の過剰投与により予想される症状は、過度の徐脈、気管支痙攣、心不全、低血圧等がある。
なお、国内未承認の高濃度製剤(エスモロール塩酸塩2500mg含有10mLアンプル)において、希釈の誤りによる過剰投与により心停止を起こしたり、心蘇生後に心筋梗塞を生じたとの報告がある。
13.2 処置
直ちに本剤の投与を中止し、必要に応じて次のような処置を行う。
13.2.1 過度の徐脈
アトロピン(1〜2mg)を静注し、更に必要に応じてβ1作動薬であるドブタミン(毎分2.5〜10μg/kgを静注)を投与する。他のβ遮断剤では、グルカゴン(10mgを静注)が有効であったとの報告がある。
13.2.2 気管支痙攣
高用量のβ2作動薬(静注及び吸入-患者の反応に応じて投与量を増減)により消失させることができる。アミノフィリン(静注)、イプラトロピウム(吸入)も考慮すること。他のβ遮断剤では、グルカゴン(1〜2mgを静注)が気管支拡張を促すとの報告がある。重度である場合には、酸素又は人工換気が必要である(全身麻酔の場合は、必要に応じ、吸入酸素濃度の増加、揮発性吸入麻酔薬の吸入濃度の増加を行う)。
13.2.3 心不全
利尿剤、血管拡張剤及び補液による処置を行い、必要に応じ強心剤の静脈内投与を行う。不十分な心収縮に起因するショックには、ドパミン、ドブタミン、コルホルシンダロパート、ミルリノン又はアムリノンの静脈内投与を考慮する。[8.5、11.1.1参照]
13.2.4 低血圧
輸液と昇圧剤(アドレナリン、ドパミン塩酸塩等のカテコールアミン)の両剤又は一方の静脈内投与を行う。
14.1 薬剤投与時の注意
14.1.1 点滴静注において皮膚の湿潤や血管外漏出による皮膚の落屑や壊死が起きることが報告されているので、点滴の側管を利用するなど、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与すること。
14.1.2 本剤を持続投与するにあたっては、投与速度の調節可能な注入器具(シリンジポンプ等)を使用すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 β遮断剤服用中の患者では、他の薬剤によるアナフィラキシーがより重篤になることがあり、また、通常用量のアドレナリンによる治療に抵抗性を示したとの報告がある。
15.1.2 他のβ遮断剤の投与により血清クレアチンホスホキナーゼ値の上昇がみられたとの報告がある。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 麻酔剤セボフルランプロポフォールフェンタニル等 | 過剰の交感神経抑制を来すおそれがあるので、注意すること。 | 相互に作用(交感神経抑制作用)を増強させる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 筋弛緩剤スキサメトニウム等 | 脱分極性筋弛緩剤の筋弛緩作用時間を延長することがあるので、注意すること。 | 本剤はスキサメトニウムの筋弛緩作用時間を延長したとの報告がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 交感神経系抑制剤 | 交感神経系の過剰の抑制(徐脈、心不全等)を来すことがあるので、減量するなど注意すること。 | 相互に作用(交感神経抑制作用)を増強させる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| カルシウム拮抗剤ベラパミルジルチアゼムニフェジピン等 | 低血圧、徐脈、房室ブロック等の伝導障害、心不全が発現するおそれがあるので、減量するなど注意すること。 | 相互に作用(心収縮力や刺激伝導系の抑制作用、降圧作用等)を増強させる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 降圧作用を有する他の薬剤ニトロプルシドナトリウム等 | 降圧作用を増強することがあるので、減量するなど適切な処置を行うこと。 | 相互に降圧作用を増強させる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| モルヒネ | 本剤の作用が増強する可能性があるので、注意すること。 | モルヒネは本剤の全血中濃度を上昇させたとの報告がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 血糖降下剤インスリンアセトヘキサミド等 | 血糖降下作用が増強されることがあるので、減量するなど注意すること。 | 血糖値が低下するとカテコールアミンが副腎から分泌され、肝でのグリコーゲンの分解を促し、血糖値を上昇させる。この時、肝臓のβ受容体が遮断されていると、カテコールアミンによる血糖上昇作用が抑えられ、血糖降下作用を増強させる可能性がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| クラスI抗不整脈剤ジソピラミドプロカインアミド等アナモレリン塩酸塩 | 過度の心機能抑制(徐脈、心停止等)があらわれることがあるので、減量するなど注意すること。 | 相互に作用(心機能抑制作用)を増強させる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| ジギタリス製剤 | 房室伝導時間が延長し、徐脈、房室ブロック等が発現することがあるので注意すること。 | 相互に作用(心刺激伝導抑制作用)を増強させる。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 交感神経作動薬アドレナリン等 | 相互の薬剤の効果が減弱する。また血管収縮、血圧上昇、徐脈を来すことがあるので注意すること。 | β遮断剤により末梢血管のβ受容体が遮断された状態でアドレナリン等の交感神経作動薬が投与されるとα受容体を介する血管収縮作用だけがあらわれる。副交感神経の反射による徐脈を来す可能性がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| コリンエステラーゼ阻害剤ネオスチグミンジスチグミン臭化物エドロホニウム塩化物等 | 本剤の代謝を阻害し、作用が増強及び作用時間が延長するおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること。 | 本剤はエステラーゼで代謝されるため、これらの薬剤との併用により本剤の作用が増強及び作用時間が延長するおそれがある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| クロニジン塩酸塩グアナベンズ酢酸塩 | クロニジン塩酸塩又はグアナベンズ酢酸塩投与中止後のリバウンド現象(血圧上昇)を増強する可能性がある。手術前数日以内にこれらの薬剤を投与中止した場合には、本剤の投与を慎重に行うこと。 | クロニジン塩酸塩を中止すると、血中カテコールアミンが上昇し、血圧上昇を来す。β遮断剤を投与すると、カテコールアミンによるα刺激作用が優位になり、血管収縮がさらに増強されるおそれがある。グアナベンズ酢酸塩も作用機序から同様な反応が予想される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| パシレオチドパモ酸塩 | 併用すると重度の徐脈や心ブロックが認められるおそれがあるので、注意すること。 | いずれも徐脈や心ブロックを引き起こすおそれがある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| フィンゴリモド塩酸塩 | フィンゴリモド塩酸塩の投与開始時に併用すると重度の徐脈や心ブロックが認められることがあるので、注意すること。 | いずれも徐脈や心ブロックを引き起こすおそれがある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| セリチニブ | 徐脈を起こすおそれがあるので、可能な限り併用しないこと。 | いずれも徐脈を起こすおそれがある。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には使用を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 心不全、末梢性虚血(いずれも頻度不明)[8.5、13.2.3参照]
11.1.2 心停止、高度徐脈、房室ブロック(いずれも頻度不明)
11.1.3 気管支痙攣、呼吸困難、喘鳴(いずれも頻度不明)
必要に応じてβ2作動薬を用いるなど適切な処置を行うこと。[9.1.3参照]
11.1.4 痙攣発作、血栓性静脈炎、肺水腫(いずれも頻度不明)
11.1.5 低血圧(23.7%)[9.1.9参照]
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には使用を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
| 循環器 | 徐脈 | ST低下、心室性期外収縮 | 蒼白、潮紅、胸痛、失神 |
| 精神神経系 | 味覚障害、めまい、傾眠、錯乱、頭痛、激越、感覚障害、抑うつ、思考異常、不安、ふらつき感、言語障害 | ||
| 呼吸器 | 鼻閉、ラ音 | ||
| 消化器 | 悪心、嘔吐、消化不良、食欲不振、便秘、口渇、腹痛 | ||
| 適用部位 | 血管外漏出による皮膚壊死、炎症・硬結等の注射部位反応、浮腫、紅斑、皮膚変色、灼熱感 | ||
| その他 | 疲労、尿閉、視覚異常、骨痛、悪寒、発熱、無力症 |
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