1.1 本剤による呼吸停止について
1.1.1 本剤の使用に当たっては、必ずガス麻酔器又は人工呼吸器を準備すること。使用時は呼吸停止を起こすことが非常に多いので、人工呼吸や挿管に熟練した医師によってのみ使用すること。[11.1.3、11.1.5参照]
1.1.2 本剤によって起こる呼吸停止は、注入後極めて速やかなので、人工呼吸の時期を失しないように、事前に設備その他の準備・点検を十分に行うこと。[11.1.3、11.1.5参照]
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 急性期後の重症の熱傷、急性期後の広範性挫滅性外傷、四肢麻痺のある患者[血中カリウムの増加作用により、心停止を起こすおそれがある。]
○麻酔時の筋弛緩、気管内挿管時・骨折脱臼の整復時・喉頭痙攣の筋弛緩、精神神経科における電撃療法の際の筋弛緩
○腹部腫瘤診断時
通常成人は下記用量を用いる。
間歇的投与法
スキサメトニウム塩化物水和物の脱水物として、1回10〜60mgを静脈内注射する。この用量で筋弛緩が得られない時は、筋弛緩が得られるまで適宜増量する。
持続点滴用法
持続性効果を求める場合は、0.1〜0.2%となるように生理食塩液または5%ブドウ糖液に溶かし、持続注入する。通常2.5mg/分ぐらいの速さで注入する。
また、乳幼児及び小児に対する投与法として静脈内注射の場合1mg/kgを、静脈内注射が不可能な場合は2〜3mg/kgを筋肉内注射する。
8.1 本剤の分解能又は排泄能が低い患者あるいは感受性が高い患者の場合には、注入量及び注入速度に注意し、完全に回復するまで監視を行う必要がある。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 重症の熱傷のある患者(急性期後の重症の熱傷のある患者を除く)
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。血中カリウムの増加作用により、心停止をおこすおそれがある。
9.1.2 広範性挫滅性外傷のある患者(急性期後の広範性挫滅性外傷のある患者を除く)
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。血中カリウムの増加作用により、心停止をおこすおそれがある。
9.1.3 ジギタリス中毒の既往歴のある患者あるいは最近ジギタリスを投与されたことのある患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。血中カリウムの増加作用により、心停止をおこすおそれがある。
9.1.4 緑内障の患者
本剤には眼内圧亢進作用がある。
9.1.5 非脱分極性筋弛緩剤で過去にアナフィラキシー反応が生じた患者[11.1.1参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 尿毒症のある患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。血中カリウムの増加作用により、心停止をおこすおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
悪性高熱症、ミオグロビン血症及び循環器系副作用(徐脈、不整脈等)があらわれやすい。[11.1.2、11.1.6参照]
9.8 高齢者
注入量及び注入速度に注意し、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。一般に、生理機能が低下していることが多い。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 生理食塩液又は5%ブドウ糖液で希釈した0.1〜0.2%溶液は調製後できるだけ速やかに使用すること(1週間以内)。また、希釈した溶液を保存する場合は、本剤が添加してある旨、容器に明記するなど誤用のないように注意すること。
14.1.2 静脈麻酔剤と混合すると沈殿を生じることがあるので、混合注射を避けること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 筋肉内注射にあたっては、組織・神経等への影響を避けるため、下記の点に注意すること。
・神経走行部位を避けるよう注意すること。
・繰返し注射する場合には、例えば左右交互に注射するなど、注射部位をかえて行うこと。
・注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| ジギタリス強心配糖体ジゴキシンメチルジゴキシン 等 | 本剤との併用により重篤な不整脈を起こすおそれがある。 | スキサメトニウム塩化物水和物の血中カリウム増加作用又はカテコールアミン放出が原因と考えられている。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| コリンエステラーゼ阻害作用を有する薬剤アンベノニウム塩化物ネオスチグミン臭化物シクロホスファミド 等 | 本剤の作用が増強し、遷延性無呼吸(持続性呼吸麻痺)を起こすことがある。 | コリンエステラーゼによる本剤の分解が阻害されると考えられている。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 非脱分極性筋弛緩剤 | 本剤の筋弛緩作用が持続し、遷延性無呼吸(持続性呼吸麻痺)を起こすことがある。 | 本剤の神経−筋遮断作用に対して、抵抗性を増加することがある。それゆえ、筋弛緩を得るには大量の本剤が必要となり、終板の感受性低下や手術後の無呼吸を延長するかもしれない。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| デスフルランイソフルラン | 本剤の筋弛緩作用が増強するので、併用する場合には、本剤を減量すること。 | 併用により本剤の筋弛緩作用が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| アプロチニン | 本剤の作用が増強又は遷延することがある。 | アプロチニンはコリンエステラーゼ活性を阻害すると考えられている。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| ゾピクロンエスゾピクロン | 本剤の作用が増強又は遷延することがある。 | 相加的に抗痙攣作用、中枢神経抑制作用が増強する可能性がある。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| アミノグリコシド系抗生剤 | これらの抗生剤を投与した外科手術後に突発的に呼吸困難を起こすことがある。 | 両薬剤ともに神経遮断作用を有しており、併用によりその作用が増強する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| リンコマイシン系抗生剤 | 本剤の筋弛緩作用が増強する。 | リンコマイシン系抗生剤は神経筋弛緩作用を持ち、本剤の作用が相加されると考えられている。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| イリノテカン塩酸塩 | 本剤の筋弛緩作用が減弱することがある。 | イリノテカンはアセチルコリン受容体への結合能を持っていると考えられている。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
ショック、アナフィラキシー(気道内圧上昇、血圧低下、頻脈、全身発赤等)を起こすことがある。[9.1.5参照]
11.1.2 悪性高熱症(頻度不明)
原因不明の頻脈・不整脈・血圧変動、急激な体温上昇、筋硬直、血液の暗赤色化(チアノーゼ)、過呼吸、ソーダライムの異常過熱・急激な変色、発汗、アシドーシス、高カリウム血症、ミオグロビン尿(ポートワイン色尿)等を伴う重篤な悪性高熱がまれにあらわれることがある。また、これらの症状の悪化により、横紋筋融解症があらわれることがある。本剤を使用中、悪性高熱に伴うこれらの症状を認めた場合は、直ちに中止し、ダントロレンナトリウムの静注、全身冷却、純酸素での過換気、酸塩基平衡の是正等適切な処置を行うこと。[9.7参照]
11.1.3 気管支痙攣、遷延性無呼吸(持続性呼吸麻痺)(いずれも頻度不明)[1.1.1、1.1.2参照]
11.1.4 心停止(頻度不明)
11.1.5 呼吸抑制(頻度不明)
本剤によって充分な筋弛緩を得ようとする時、全く呼吸抑制が起こらないよう施術することは困難であり、また、呼吸停止を警戒しすぎると所要の筋弛緩が得られないことがある。呼吸停止が起こった場合には、薬液の注入を筋弛緩維持に必要な量まで減ずるか、一旦中止し、人工呼吸によって積極的に酸素を補給しないと危険である。20〜40mgの本剤投与によって発生する呼吸停止は、通常およそ2〜5分で回復する。[1.1.1、1.1.2参照]
11.1.6 横紋筋融解症(頻度不明)
体温の上昇がない場合においても、高カリウム血症、ミオグロビン尿、血清逸脱酵素の著明な上昇、筋肉痛等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[9.7参照]
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 | |
| 循環器 | 徐脈、頻脈、不整脈、血圧降下 |
| 筋肉 | 術後筋肉痛 |
| 皮膚 | 発疹 |
| その他 | 眼内圧上昇、アレルギー症状 |
スキサメトニウム注40「マルイシ」 362円/管
スキサメトニウム注100「マルイシ」 677円/管
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