血液凝固阻止剤
| 一般名 |
ヘパリンナトリウム
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|---|---|
| 製造/販売 | 富士製薬工業 |
| 剤形/規格 |
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汎発性血管内血液凝固症候群の治療、血液透析・人工心肺その他の体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、輸血および血液検査の際の血液凝固の防止
血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の治療および予防
本剤は通常下記の各投与法によって投与されるが、それらは症例または適応領域、目的によって決定される。
通常本剤投与後、全血凝固時間(Lee-White法)または全血活性化部分トロンボプラスチン時間(WBAPTT)が正常値の2〜3倍になるように年齢・症状に応じて適宜用量をコントロールする。
静脈内点滴注射法
10,000〜30,000単位を5%ブドウ糖注射液、生理食塩液、リンゲル液1,000mLで希釈し、最初1分間30滴前後の速度で、続いて全血凝固時間またはWBAPTTが投与前の2〜3倍になれば1分間20滴前後の速度で、静脈内に点滴注射する。
静脈内間歇注射法
1回5,000〜10,000単位を4〜8時間ごとに静脈内注射する。
注射開始3時間後から、2〜4時間ごとに全血凝固時間またはWBAPTTを測定し、投与前の2〜3倍になるようにコントロールする。
皮下注射・筋肉内注射法
1回5,000単位を4時間ごとに皮下注射または筋肉内注射する。なお、筋肉内注射にあたっては、組織・神経などへの影響を避けるため、下記の点に配慮すること。
神経走行部位を避けるよう注意すること。
繰り返し注射する場合には、注射部位を変え、たとえば左右交互に注射するなど行うこと。なお、乳・幼・小児には連用しないことが望ましい。
注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位を変えて注射すること。
体外循環時(血液透析・人工心肺)における使用法
人工腎では各患者の適切な使用量を透析前に各々のヘパリン感受性試験の結果に基づいて算出するが、全身ヘパリン化法の場合、通常透析開始に先立って、1,000〜3,000単位を投与し、透析開始後は、1時間当たり、500〜1,500単位を持続的に、または1時間ごとに500〜1,500単位を間歇的に追加する。局所ヘパリン化法の場合は、1時間当たり1,500〜2,500単位を持続注入し、体内灌流時にプロタミン硫酸塩で中和する。
術式・方法によって多少異なるが、人工心肺灌流時には、150〜300単位/kgを投与し、更に体外循環時間の延長とともに必要に応じて適宜追加する。体外循環後は、術後出血を防止し、ヘパリンの作用を中和するためにプロタミン硫酸塩を用いる。
輸血および血液検査の際の血液凝固防止法
輸血の際の血液凝固の防止には、通常血液100mLに対して400〜500単位を用いる。
血液検査の際の血液凝固の防止にもほぼ同様に、血液20〜30mLに対して100単位を用いる。
血液凝固能検査等出血管理を十分に行いつつ使用すること。
脊椎・硬膜外麻酔あるいは腰椎穿刺等との併用により、穿刺部位に血腫が生じ、神経の圧迫による麻痺があらわれるおそれがある。併用する場合には神経障害の徴候および症状について十分注意し、異常が認められた場合には直ちに適切な処置を行うこと。
急に投与を中止した場合、血栓を生じるおそれがあるので徐々に減量すること。
本剤の抗凝血作用を急速に中和する必要のある場合には、プロタミン硫酸塩を投与すること。(特に血液透析、人工心肺による血液体外循環終了時に中和する場合には反跳性の出血があらわれることがある。)
本剤投与後にヘパリン起因性血小板減少症(HIT:heparin-induced thrombocytopenia)があらわれることがある。HITはヘパリン−血小板第4因子複合体に対する自己抗体(HIT抗体)の出現による免疫学的機序を介した病態であり、血小板減少と重篤な血栓症(脳梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症等)を伴うことが知られている。本剤投与後は血小板数を測定し、血小板数の著明な減少や血栓症を疑わせる異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、投与終了数週間後に、HITが遅延して発現したとの報告もある。(「重大な副作用」の項参照)
調製時
抗ヒスタミン剤は本剤と試験管内で混合すると反応し沈殿を生じることがあるので、混注は避けること。
外来透析患者では、穿刺部の止血を確認してから帰宅させること。
コレステロール結晶塞栓症(CCE)は、大動脈内に存在する粥状硬化巣が崩壊・流失し、微細なコレステロール結晶が全身臓器の塞栓を起こすことによって発症するとされており、その主な原因は血管内カテーテル操作であるとされているが、ヘパリン等の抗凝固療法が誘因となり発症することも報告されている。
HIT発現時に出現するHIT抗体は100日程度で消失〜低下するとの報告がある。(「原則禁忌」(7)の項、「1.重要な基本的注意」(5)の項参照)
安定性試験
最終包装製品を用いた長期保存試験(室温、なりゆき湿度、遮光、3年)の結果、外観および含量等は規格の範囲内であり、ヘパリンNa注5千単位/5mL「F」、ヘパリンNa注5万単位/50mL「F」およびヘパリンNa注10万単位/100mL「F」は通常条件の市場流通下において3年間安定であることが確認された。
他の薬剤との相互作用は、可能なすべての組合せについて検討されているわけではない。抗凝血療法施行中に新たに他剤を併用したり、休薬する場合には、凝血能の変動に注意すること。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 抗凝血剤 | 本剤の作用が出血傾向を増強するおそれがある。 | 本剤の抗凝血作用と血液凝固因子の生合成阻害作用により相加的に出血傾向が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 血栓溶解剤 ウロキナーゼ、t-PA製剤 等 | 本剤の作用が出血傾向を増強するおそれがある。 | 本剤の抗凝血作用とフィブリン溶解作用により相加的に出血傾向が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 血小板凝集抑制作用を有する薬剤 アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン塩酸塩 等 | 本剤の作用が出血傾向を増強するおそれがある。 | 本剤の抗凝血作用と血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| テトラサイクリン系抗生物質 強心配糖体 ジギタリス製剤 ニトログリセリン製剤 | 本剤の作用が減弱することがある。 | 機序不明 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 筋弛緩回復剤 スガマデクスナトリウム | 本剤の抗凝固作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を観察するとともに血液凝固に関する検査値に注意すること。 | 作用機序は不明であるが、スガマデクスナトリウム4mg/kgと抗凝固剤の併用中に活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)又はプロトロンビン時間(PT)の軽度で一過性の延長が認められている。 |
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
(頻度不明)
ショック、アナフィラキシー
ショック、アナフィラキシーが起こることがあるので、観察を十分に行い、血圧低下、意識低下、呼吸困難、チアノーゼ、じん麻疹等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
出血
脳出血、消化管出血、肺出血、硬膜外血腫、後腹膜血腫、腹腔内出血、術後出血、刺入部出血等重篤な出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤を減量または中止し、適切な処置を行うこと。なお、血液凝固能が著しく低下し、抗凝血作用を急速に中和する必要がある場合には、プロタミン硫酸塩を投与する。
血小板減少、HIT等に伴う血小板減少・血栓症
本剤投与後に著明な血小板減少があらわれることがある。ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の場合は、著明な血小板減少と脳梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症等の血栓症やシャント閉塞、回路内閉塞等を伴う。本剤投与後は血小板数を測定し、血小板数の著明な減少や血栓症を疑わせる異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 | |
| 過敏症 | そう痒感、じん麻疹、悪寒、発熱、鼻炎、気管支喘息、流涙等注) |
| 皮膚 | 脱毛、白斑、出血性壊死等 |
| 肝臓 | AST(GOT)・ALT(GPT)の上昇等 |
| 長期投与 | 骨粗鬆症、低アルドステロン症 |
| 投与部位 | 局所の疼痛性血腫(皮下または筋肉内注射時) |
注)このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
ヘパリンNa注5千単位/5mL「F」 144円/瓶
ヘパリンNa注5万単位/50mL「F」 724円/瓶
ヘパリンNa注10万単位/100mL「F」 1263円/瓶
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