本剤の投与は、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)の治療に十分な知識と経験を有する医師のもと、異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍によるSIADHと診断された患者にのみ行うこと。(≪効能・効果に関連する使用上の注意≫(1)の項参照)
本剤による治療は対症療法であり、水分制限を試みた上で、必要と判断された場合にのみ行うこと。(≪効能・効果に関連する使用上の注意≫(2)の項参照)
本剤投与時は、急激な血清ナトリウム濃度の上昇により、橋中心髄鞘崩壊症を来すおそれがあるので、医師の監視下におき、血清ナトリウム濃度の推移等を注意深く観察し、急激な血清ナトリウム濃度の上昇がみられた場合には必要な処置をとること。特に、本剤投与開始日には血清ナトリウム濃度を頻回に測定すること。(「2.重要な基本的注意(1)」の項参照)
本剤により生殖細胞に染色体異常を誘発する可能性が報告されているので、妊娠する可能性のある婦人に投与する場合には、避妊をさせること。(「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与(2)」の項参照)
本剤の成分又は類似化合物(トルバプタン等)に対し過敏症の既往歴のある患者
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群における低ナトリウム血症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)
通常、成人にはモザバプタン塩酸塩として30mgを1日1回食後に経口投与する。
急激な血清ナトリウム濃度の上昇により、橋中心髄鞘崩壊症を来すおそれがあるので、患者を入院させ、医師の監視下におき、次の点に注意すること。(
〔警告〕3.の項参照)
本剤の投与は、血清ナトリウム濃度、尿量及び臨床症状等、患者の状態を観察しながら行うこと。特に、本剤投与開始日には、投与4〜6時間後並びに8〜12時間後に血清ナトリウム濃度を測定すること。[健康成人男子に本剤を単回投与した時の血清ナトリウム濃度は、本剤投与4〜6時間後に最大値を示した。]
必要に応じ、飲水量あるいは輸液(5%ブドウ糖液)を増量させ、血清ナトリウム濃度の上昇が10mEq/L/24hrを超えないようにすること。
本剤投与中は水分制限を実施するため、脱水症状があらわれるおそれがあるので、血圧、脈拍数、尿量、血清ナトリウム濃度等を頻回にチェックし、脱水症状の発現に注意すること。
本剤による血圧低下のおそれがあり、また、作用機序は不明であるが、血圧上昇のおそれもあるので、本剤投与中は血圧の変動に注意すること。
本剤による高カリウム血症発症あるいは増悪のおそれがあるので、本剤投与中は血清カリウム濃度を測定すること。
患者又はそれに代わる適切な者に対して、本剤の有効性及び安全性は少数例の抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の患者のみで評価されたものであることを十分説明し、文書による同意を得ること。(
〔臨床成績〕の項参照)
肝機能障害のある患者[未変化体及び活性代謝物の血中濃度が上昇するおそれがある。]
腎機能障害のある患者[未変化体及び活性代謝物の血中濃度が上昇するおそれがある。また、本剤の投与により、高カリウム血症が発現するおそれがある。]
高カリウム血症の患者[本剤の投与により、高カリウム血症が増悪するおそれがある。]
低血圧症あるいは循環不全のある患者[循環血漿量の減少により、低血圧症あるいは循環不全が増悪するおそれがある。]
食事の摂取が困難な患者[食後投与に比べ空腹時では、血中濃度が上昇し、作用が強くあらわれるおそれがある。]
高齢者(「5.高齢者への投与」の項参照)
異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群を対象とした本薬の注射剤による臨床試験において、死亡が2例報告された。このうち、1例は死因不明であり、播種性血管内凝固症候群(DIC)を発現し死亡した他の1例は本薬の注射剤との関連性が否定されなかった。
本剤は、主として肝代謝酵素CYP3A4とCYP2C8で代謝される。
CYP3A4阻害剤との併用により本剤の代謝が阻害され未変化体及び活性代謝物の血中濃度が上昇する可能性がある。更に、CYP3A4で代謝される薬剤の代謝を阻害しその血中濃度を上昇させる可能性もある。しかし、他の薬剤との相互作用はすべての薬剤との組み合わせについて検討されているわけではないので、他剤による治療中に新たに本剤を併用、又は本剤による治療中に新たに他の薬剤を併用する場合には、患者の状態を十分観察し慎重に投与すること。(〔薬物動態〕の項参照)
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
薬物代謝酵素(CYP3A4)を阻害する薬剤イトラコナゾール等 | 代謝阻害により、本剤の作用が増強するおそれがある。 | イトラコナゾールは、本剤の代謝酵素であるCYP3A4を阻害し、未変化体及び活性代謝物の血中濃度を上昇させる。(〔薬物動態〕の項参照) |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
薬物代謝酵素(CYP3A4)の基質となる薬剤デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物抗悪性腫瘍薬(イリノテカン塩酸塩水和物、ビンクリスチン硫酸塩等)鎮痛剤(オキシコドン塩酸塩水和物、ブプレノルフィン塩酸塩、フェンタニルクエン酸塩、フェンタニル等)等 | 代謝阻害により、基質となる薬剤の作用が増強するおそれがある。 | 本剤は、これらの薬剤のCYP3A4による代謝を阻害するおそれがある。(〔薬物動態〕の項参照) |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
ループ利尿薬フロセミド等 | 利尿作用が増強するおそれがある。血圧、脈拍数、尿量、血清ナトリウム濃度等を頻回にチェックし、脱水症状の発現に注意すること。 | 利尿作用を増強させる。(〔薬物動態〕の項参照) |
国内で実施された抗利尿ホルモン不適合分泌症候群を対象とした臨床試験(異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍以外に起因する12例を含む)において、安全性解析対象28例中11例(39.3%)に臨床検査値の異常を含む副作用が認められている。主な副作用は、口渇6件(21.4%)、AST(GOT)上昇2件(7.1%)、ALT(GPT)上昇2件(7.1%)、血清カリウム上昇2件(7.1%)等であった。
5%以上 | 1〜5%未満 | |
肝臓 | AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇 | 肝機能異常、γ-GTP上昇、LDH上昇、コリンエステラーゼ減少 |
消化器 | 口渇 | 食欲減退 |
腎臓 | BUN上昇 | |
泌尿器 | 頻尿 | |
電解質 | 血清カリウム上昇 | 血清カルシウム減少 |
その他 | 倦怠感、総蛋白減少、口周囲浮腫 |
フィズリン錠30mg 9139.1円/錠
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