本剤投与により肝機能障害が発現するため、肝機能検査を必ず投与前に行い、投与中においても、少なくとも1ヵ月に1回実施すること。なお、投与開始3ヵ月間は2週に1回の検査が望ましい。肝機能検査値の異常が認められた場合はその程度及び臨床症状に応じて、減量及び投与中止など適切な処置をとること。[7.2、7.3、8.1、9.3.1、9.3.2、11.1.1参照]
妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.4、9.5参照]
中等度あるいは重度の肝障害のある患者[9.3.1参照]
シクロスポリン又はタクロリムスを投与中の患者[10.1、16.7.1参照]
グリベンクラミドを投与中の患者[10.1、16.7.2参照]
本剤及び本剤の成分に過敏症の既往歴のある患者
肺動脈性肺高血圧症
通常、乳児、幼児又は小児には、ボセンタンとして1回2mg/kgを1日2回朝夕、用時、少量の水に分散させ経口投与する。ただし、最大投与量は1回120mg、1日240mgとする。
肝機能検査を必ず投与前に行い、投与中においても、少なくとも1ヵ月に1回実施すること。なお投与開始3ヵ月間は2週に1回の検査が望ましい。[1.、7.2、7.3、9.3.1、9.3.2、11.1.1参照]
本剤投与を中止する場合には、併用薬(ワルファリンなど)の使用状況などにより、必要に応じ漸減を考慮すること。[9.1.2、10.2、16.7.3、16.7.5参照]
本剤の投与を少なくとも8週間行ったにも拘らず、臨床症状の悪化がみられた場合には、他の治療法を検討すること。
ヘモグロビン減少、血小板減少等が起こる可能性があるので、投与開始時及び投与開始後4ヵ月間は毎月、その後は3ヵ月に1回の頻度で血液検査を行うこと。[11.1.2参照]
本剤の投与により肺水腫の徴候が見られた時は、肺静脈閉塞性疾患の可能性を考慮すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血圧の患者
血圧を一層低下させるおそれがある。
9.1.2 ワルファリンを投与中の患者
本剤投与開始時、増量・減量時及び中止時には必ずINR値の確認を行い、ワルファリン投与量の調節を行うこと。適切なINR値になるまでは2週に1回の検査が望ましい。本剤との併用によりワルファリンの効果が減弱することがある。[8.2、10.2、16.7.3参照]
9.1.3 重度の左心室機能不全を合併症にもつ患者
体液貯留の徴候(例えば体重の増加)に対して経過観察を行うこと。徴候が認められた場合には、利尿剤の投与開始、又は投与中の利尿剤の増量などを考慮すること。本剤投与開始前に体液貯留が認められた患者には利尿剤の投与を検討すること。
9.1.4 フェニルケトン尿症の患者
症状を増悪させるおそれがある。本剤は1錠中3.7mgのアスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)を含有する。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 中等度あるいは重度の肝障害のある患者
投与しないこと。肝機能障害を増悪させるおそれがある。[1.、2.2、7.2、7.3、8.1参照]
9.3.2 投与開始前のAST、ALT値のいずれか又は両方が基準値上限の3倍を超える患者
肝機能障害を増悪させるおそれがある。[1.、7.2、7.3、8.1、11.1.1参照]
9.4 生殖能を有する者
避妊薬単独での避妊をさけ、本剤投与開始前及び投与期間中は、毎月妊娠検査を実施すること。[2.1、9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。
動物実験で催奇形性が報告されている。[2.1、9.4参照]
9.6 授乳婦
9.7 小児等
低出生体重児又は新生児に対する有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
13.1 症状
外国において、健康男性にボセンタン2400mgを単回経口投与した時、主な有害事象は、軽度から中等度の頭痛であった。市販後において、ボセンタン10000mgを投与された1例の男性患者では、悪心、嘔吐、低血圧、浮動性めまい、発汗、霧視が発現したが、24時間の血圧管理の下、回復した。
13.2 処置
ボセンタンは血漿タンパクとの親和性が高く、透析により除去できないと考えられる。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。
PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
本剤は小児が容易に中身を取り出せないように包装に工夫が施されているため、PTPシートから取り出す際には、裏面の目印箇所から保護フィルムを剥がした後、ゆっくりと指の腹で錠剤を押し出すようにして取り出すよう指導すること。
本剤を分割後は、密閉容器にて室温で保管の上、3ヵ月以内に使用すること。
14.2 薬剤投与時の注意
スプーン等に少量の水(錠剤を覆う程度の量)を入れ、これに本剤を加えて分散してから服用すること。さらに、使用したスプーン等に再度少量の水を加え服用すること。可能な場合には、服用後にコップ一杯程度の水を飲むこと。本剤の分散には、水以外を使用しないこと。
15.1 臨床使用に基づく情報
海外において、本剤の投与により肝硬変及び肝不全があらわれたとの報告がある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
エンドセリン受容体拮抗薬の一部において、10週以上の投与により雄ラットで輸精管の萎縮、精子数減少、受胎率低下が認められた。
本剤は、主に薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP2C9、CYP3A4)で代謝される。一方で本剤はCYP2C9、CYP3A4の誘導物質である。また、
試験において本剤はCYP2C19に誘導作用を示した。[16.4参照]
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)、タクロリムス(プログラフ)[2.3、16.7.1参照] | (1)本剤の血中濃度が急激に上昇し、本剤の副作用が発現するおそれがある。(2)シクロスポリン、タクロリムスの血中濃度が低下し、効果が減弱するおそれがある。 | (1)シクロスポリンのCYP3A4活性阻害作用及び輸送タンパク質阻害による肝細胞への取込み阻害により、本剤の血中濃度を上昇させる。タクロリムスは主にCYP3A4で代謝され、シクロスポリンと同等以上に本剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。(2)本剤のCYP3A4誘導作用により、シクロスポリン、タクロリムスの血中濃度を低下させる。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)[2.4、16.7.2参照] | 肝酵素値上昇の発現率が2倍に増加した。 | 胆汁酸塩の排泄を競合的に阻害し、肝細胞内に胆汁酸塩の蓄積をもたらす。一部の胆汁酸塩の肝毒性作用により、二次的にトランスアミナーゼの上昇をもたらす可能性がある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
ワルファリン[8.2、9.1.2、16.7.3参照] | ワルファリンの血中濃度が低下することがある。そのため、ワルファリンを併用する際には、凝血能の変動に十分注意しながら、必要に応じ用量を調整すること。 | 本剤のCYP2C9及びCYP3A4誘導作用により、ワルファリンの血中濃度を低下させる。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
ケトコナゾール注)、フルコナゾール[16.7.4参照] | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の副作用が発現しやすくなるおそれがある。 | ケトコナゾールのCYP3A4阻害作用により、本剤の血中濃度を上昇させる。フルコナゾールのCYP2C9及びCYP3A4阻害作用により、本剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
HMG-CoA還元酵素阻害薬(シンバスタチン等)[8.2、16.7.5参照] | シンバスタチンの血中濃度が低下し、シンバスタチンの効果が減弱する。また、CYP3A4又はCYP2C9により代謝されるスタチン製剤及びその活性水酸化物の血中濃度を低下させ、効果を減弱させる可能性がある。そのため、これらの薬剤を併用する場合には、血清コレステロール濃度を測定し、必要に応じ用量を調整すること。 | 本剤のCYP3A4又はCYP2C9誘導作用により、シンバスタチン及びこれらの酵素により代謝されるスタチン製剤の血中濃度を低下させる。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
リファンピシン[16.7.6参照] | 本剤の血中濃度が低下し、本剤の効果が減弱するおそれがある。 | リファンピシンのCYP2C9及びCYP3A4誘導作用により、本剤の血中濃度を低下させる。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
Ca拮抗薬(アムロジピン、ニフェジピン、ジルチアゼム等) | (1)血圧低下を助長するおそれがある。(2)Ca拮抗薬の血中濃度が低下する可能性がある。 | (1)両剤の薬理学的な相加作用等が考えられる。(2)本剤のCYP3A4誘導作用により、Ca拮抗薬の血中濃度を低下させる可能性がある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
経口避妊薬[16.7.7参照] | 経口避妊薬の血中濃度が低下し、避妊効果が得られないおそれがある。 | 本剤のCYP3A4誘導作用により、経口避妊薬の血中濃度を低下させる。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
グレープフルーツジュース | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の副作用が発現しやすくなるおそれがあるので、本剤投与時はグレープフルーツジュースを摂取しないようにすること。 | グレープフルーツジュースに含まれる成分のCYP3A4阻害作用により、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)含有食品 | 本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないようにすること。 | セイヨウオトギリソウに含まれる成分のCYP3A4誘導作用により、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
プロスタグランジン系薬物(ベラプロストナトリウム、エポプロステノールナトリウム) | 血圧低下を助長するおそれがある。 | 両剤の薬理学的な相加作用等が考えられる。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
PDE5阻害薬(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)[16.7.8参照] | (1)血圧低下を助長するおそれがある。(2)PDE5阻害薬の血中濃度が低下する可能性がある。(3)シルデナフィルの血中濃度が低下し、本剤の血中濃度が上昇する。 | (1)両剤の薬理学的な相加作用等が考えられる。(2)本剤のCYP3A4誘導作用により、この酵素で代謝されるPDE5阻害薬の血中濃度を低下させる可能性がある。(3)本剤のCYP3A4誘導作用により、シルデナフィルの血中濃度を低下させる。また、機序は不明であるが、シルデナフィルは本剤の血中濃度を上昇させる。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
HIV感染症治療薬(リトナビル等) | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の副作用が発現しやすくなるおそれがある。 | これらの薬剤のCYP3A4阻害作用により、本剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。 |
注)経口剤、注射剤は国内未発売
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 重篤な肝機能障害(1.3%)
AST、ALT等の上昇を伴う重篤な肝機能障害があらわれることがある。[1.、7.2、7.3、8.1、9.3.2参照]
11.1.2 汎血球減少、白血球減少、好中球減少、血小板減少、貧血(頻度不明)
汎血球減少、白血球減少、好中球減少、血小板減少、貧血(ヘモグロビン減少)があらわれることがある。[8.4参照]
11.1.3 心不全、うっ血性心不全(頻度不明)
心不全が増悪することがあるので、投与中は観察を十分に行い、体液貯留、急激な体重増加、心不全症状・徴候(息切れ、動悸、心胸比増大、胸水等)が増悪あるいは発現した場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
10%以上注1) | 10%未満注1) | 頻度不明 | |
神経系障害 | 頭痛 | 体位性めまい | 浮動性めまい |
心臓障害 | 動悸 | ||
血管障害 | ほてり、潮紅、血圧低下 | ||
呼吸器、胸郭及び縦隔障害 | 呼吸困難 | ||
胃腸障害 | 悪心、嘔吐、下痢 | ||
肝胆道系障害 | 肝機能異常 | ||
皮膚及び皮下組織障害 | 皮膚炎、そう痒症、発疹 | ||
筋骨格系及び結合組織障害 | 筋痛 | 背部痛 | |
全身障害及び投与局所様態 | 倦怠感 | 下肢浮腫、疲労 | 発熱、浮腫 |
臨床検査 | AST上昇、ALT上昇、γ-GT(GTP)上昇、白血球数減少、ヘモグロビン減少 | ALP上昇、赤血球数減少、好酸球数増加、ヘマトクリット減少 | 血小板数減少、ビリルビン上昇 |
代謝及び栄養障害 | 体液貯留 |
注1)成人及び小児肺動脈性肺高血圧症患者を含む。
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