本剤投与により、敗血症を含む重篤な感染症等があらわれることがあり、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ本剤を投与すること。また、本剤の投与において、重篤な感染症等の副作用により、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び医師のもとで投与し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、速やかに担当医に連絡するよう患者に注意を与えること。
敗血症等の致命的な感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発現に注意すること。
本剤について
重篤な感染症の患者〔感染症が悪化するおそれがある。〕
活動性結核の患者〔症状が悪化するおそれがある。〕
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
以下のクリオピリン関連周期性症候群
家族性寒冷自己炎症症候群
マックル・ウェルズ症候群
新生児期発症多臓器系炎症性疾患
高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
TNF受容体関連周期性症候群
既存治療で効果不十分な
家族性地中海熱
クリオピリン関連周期性症候群
通常、体重40kg以下の患者にはカナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回2mg/kgを、体重40kgを超える患者には1回150mgを8週毎に皮下投与する。
十分な臨床的効果(皮疹及び炎症症状の寛解)がみられない場合には適宜漸増するが、1回最高用量は体重40kg以下の患者では8mg/kg、体重40kgを超える患者では600mgとする。
最高用量まで増量し、8週以内に再燃がみられた場合には、投与間隔を4週間まで短縮できる。
なお、症状に応じて1回投与量の増減を検討すること。
高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
通常、体重40kg以下の患者にはカナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回2mg/kgを、体重40kgを超える患者には1回150mgを、4週毎に皮下投与する。
十分な臨床的効果がみられない場合には追加投与又は適宜漸増するが、1回最高用量は体重40kg以下の患者では6mg/kg、体重40kgを超える患者では450mgとする。
TNF受容体関連周期性症候群及び家族性地中海熱
通常、体重40kg以下の患者にはカナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回2mg/kgを、体重40kgを超える患者には1回150mgを、4週毎に皮下投与する。
十分な臨床的効果がみられない場合には追加投与又は適宜漸増するが、1回最高用量は体重40kg以下の患者では4mg/kg、体重40kgを超える患者では300mgとする。
臨床試験において、上気道感染等の感染症が高頻度に報告されており、重篤な感染症も報告されているため、本剤投与中は感染症の発現、再発及び増悪に十分注意すること。(「4.副作用(1)重大な副作用」の項参照)
本剤により感染に対する炎症反応が抑制される可能性があるため、本剤投与中は患者の状態を十分に観察すること。
本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線(レントゲン)検査に加えインターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として抗結核薬を投与した上で、本剤を投与すること。
胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、既感染が強く疑われる患者
結核患者との濃厚接触歴を有する患者
また、本剤投与中も、胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核症の発現には十分に注意し、患者に対し、結核を疑う症状(持続する咳、体重減少、発熱等)が発現した場合には速やかに担当医に連絡するよう説明すること。なお、結核の活動性が確認された場合は結核の治療を優先し、本剤を投与しないこと。
本剤投与により好中球減少があらわれることがあるので、初回投与前、概ね投与1ヵ月後、及びその後本剤投与中は定期的に好中球数を測定すること。(「4.副作用(1)重大な副作用」の項参照)
臨床試験において、アナフィラキシー又はアナフィラキシーショックは報告されていないが、本剤の投与に対する過敏症反応が報告されているため、重篤な過敏症反応のリスクを除外することはできない。本剤を投与する際には過敏症反応の発現に注意し、必要に応じて適切な処置を行うこと。
本剤を投与された患者において、悪性腫瘍が報告されている。本剤を含む抗IL-1製剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍等の発現には注意すること。
本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。本剤投与前に、必要なワクチンを接種しておくことが望ましい。
本剤は、マスターセルバンク及びワーキングセルバンク作製時において、培地成分の一部としてヒト血清アルブミン及びヒト血清トランスフェリンを使用しているが、最終製品の成分としては含まれていない。これらヒト血液由来成分のうち、ヒト血清アルブミンの原血漿に対してC型肝炎ウイルス(HCV)に対する核酸増幅検査を実施している。原血漿を対象としたその他の核酸増幅検査は実施していないが、血清学的検査によりウイルスの抗原又はウイルスに対する抗体が陰性であることを確認している。更に、これらヒト血液由来成分及びカナキヌマブ(遺伝子組換え)の製造において、複数の工程によりウイルスの除去・不活化をしており、最終製品へのB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)混入の可能性は極めて低い。また、ヒト血清アルブミンの製造にオランダで採血したヒト血液を用いているが、本剤の投与により伝達性海綿状脳症(TSE)がヒトに伝播したとの報告はなく、TSEに関する理論的なリスク評価値は、一定の安全性を確保する目安に達しており、本剤によるTSE伝播のリスクは極めて低い。本剤の投与に際しては、その旨の患者又はその保護者への説明を考慮すること。
感染症の患者又は感染症が疑われる患者〔感染症が悪化するおそれがある。〕(「2.重要な基本的注意」の項参照)
結核の既往歴を有する患者又は結核感染が疑われる患者〔結核を活動化させるおそれがある。〕(「2.重要な基本的注意」の項参照)
再発性感染症の既往歴のある患者〔感染症が再発するおそれがある。〕(「2.重要な基本的注意」の項参照)
易感染性の状態にある患者〔感染症を誘発するおそれがある。〕
投与経路
本剤の投与は皮下投与のみとすること。
調製前の準備
巻末の投与液量一覧表を参考に、必要数のバイアル、日局注射用水注入用注射筒(1mL)、投与用注射筒(必要液量を正確に採取できる注射筒)及び注射針(21ゲージ及び27ゲージ)を用意すること。
調製方法
本剤は泡立ちやすいので、調製する際は、バイアルを振らない等、注意すること。
本剤の溶解には日局注射用水以外は使用しないこと。
バイアルのゴム栓部分をアルコール綿等で消毒する。
21ゲージの注射針を装着した1mLの注射筒を用いて、本剤1バイアルに日局注射用水1.0mLをゆっくりと注入して溶解する(液量は1.2mLとなる)。
約45°の角度でバイアルを約1分間ゆっくりと回転させた後、5分間静置する。
バイアルをゆっくりと10回上下反転させる。可能であれば、指でゴム栓に触れないようにする。このときバイアルを振らないこと。
室温で約15分間静置する。
バイアルの側面を軽く叩き、ゴム栓に付着している液体を下に移動させる。この溶液には肉眼で確認できる粒子はほとんど含まれておらず、澄明又は混濁している。
溶解後60分以内に使用しない場合は、冷蔵庫内(2〜8℃)で保管し、24時間以内に使用すること。使用後の残液は使用しないこと。
投与時
溶液内に粒子がある場合等、外観に異常を認めた場合には使用しないこと。
本剤1バイアルを日局注射用水1.0mLに溶解した場合、溶液1.0mLがカナキヌマブ(遺伝子組換え)の投与量150mgに相当する。投与量に応じて必要な液量を、21ゲージの注射針を装着した注射筒を用いて注意深く採取する。このとき、必要液量を正確に採取できる注射筒を用いること。
採取後、27ゲージの注射針を用いて皮下投与する。
瘢痕組織への投与を避けること。
1回につき1.0mLを超えて投与する場合には、1箇所あたり1.0mLを超えないように部位を分けて投与すること。
クリオピリン関連周期性症候群患者を対象とした国内及び海外臨床試験において、白血球数及び血小板数の平均値が減少したが、これらの変動は炎症反応の低下による可能性がある。
クリオピリン関連周期性症候群患者を対象とした海外臨床試験において、トランスアミナーゼ上昇を伴わない、無症候性で軽度の血清ビリルビン上昇が報告されている。
本剤と他の薬剤との相互作用を検討した臨床試験は実施されていない。
代謝酵素チトクロームP450(CYP450)の発現は、IL-1β等の炎症性サイトカインにより抑制されているとの報告があり、本剤のIL-1β阻害作用により、CYP450の発現が増加する可能性がある。CYP450により代謝され、治療域が狭い薬剤と併用する場合には、これらの薬剤の効果や血中濃度に関するモニタリングを行い、必要に応じて投与量を調節すること。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 抗TNF製剤 | 重篤な感染症発現のリスクが増大するおそれがある。また、他の抗IL-1製剤と抗TNF製剤との併用により、重篤な感染症の発現頻度増加が認められているため、本剤との併用は行わないことが望ましい。 | 共に免疫抑制作用を有するため。 |
クリオピリン関連周期性症候群患者の国内臨床試験(D2308試験)において、19例中12例(63.2%)に副作用が認められた。主な副作用は鼻咽頭炎3例(15.8%)、口内炎2例(10.5%)等であった。
クリオピリン関連周期性症候群患者の海外臨床試験(A2102試験、D2304試験、D2306試験の併合解析)において、169例中68例(40.2%)に副作用が認められた。主な副作用は頭痛7例(4.1%)、体重増加7例(4.1%)、回転性めまい6例(3.6%)、気管支炎5例(3.0%)等であった。(承認時までの集計)
高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)患者、TNF受容体関連周期性症候群患者、家族性地中海熱患者の国際共同試験(N2301試験)において、169例(日本人8例を含む)中47例(27.8%)に副作用が認められた。主な副作用は注射部位反応13例(7.7%)、頭痛5例(3.0%)等であった。(効能又は効果の一変承認時までの集計)
「重大な副作用」及び「その他の副作用」
重篤な感染症(
敗血症や日和見感染症(アスペルギルス症、非定型抗酸菌症、帯状疱疹等)等の重篤な感染症があらわれることがあるので、本剤投与後は患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には感染症に対する治療を行い、本剤の投与は継続しないこと。
好中球減少(頻度不明)
好中球減少があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 | 5%以上 | 5%未満 | |
| 感染症 | 尿路感染、気管支炎、ウイルス感染、扁桃炎、鼻炎、耳感染、外陰部膣カンジダ症、下気道感染、肺感染 | 鼻咽頭炎 | 胃腸炎、肺炎、副鼻腔炎、上気道感染、咽頭炎 |
| 神経系 | 回転性めまい | − | 頭痛 |
| 過敏症 | 過敏症反応 | − | − |
| 皮膚 | − | 注射部位反応 | − |
| 消化器 | 下痢 |
− | 口内炎 |
| 肝臓 | − | − | AST(GOT)・ALT(GPT)上昇 |
|
|
血小板数減少 | − |
|
| その他 | 体重増加 | − | − |
イラリス皮下注用150mg 1507676円/瓶
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