遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン製剤
| 一般名 |
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
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|---|---|
| 製造/販売 | MSD |
| 剤形/規格 |
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本剤の投与に引き続き、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与した場合、血栓塞栓症等を伴う重篤な卵巣過剰刺激症候群があらわれることがある。
エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば、乳癌、子宮内膜癌)及びその疑いのある患者、卵巣、下垂体又は視床下部に腫瘍のある患者[腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すおそれがある。]
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
診断の確定していない不正出血のある患者[悪性腫瘍の疑いがある。]
本剤の成分に対し過敏症のある患者
多
フォリスチム注50
視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発
フォリスチム注50
視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発に使用する場合
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常1日50国際単位を7日間皮下又は筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し(卵巣の反応性が低い場合は、原則として、7日間ごとに25国際単位を増量)、平均径18mm以上の卵胞を超音波断層法により確認した後、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤により排卵を誘起する。
本剤は、調節卵巣刺激法及び排卵誘発法に十分な知識及び経験のある医師が使用すること。
患者の選択
本剤の投与開始前に、患者の婦人科的及び内分泌学的検査を十分に行うこと。検査には配偶者の受精能検査も含まれる。また、妊娠初期の患者を除外するために慎重な検査を行うこと。
複数卵胞発育のための調節卵巣刺激に使用する場合
対象患者
本剤を用いた複数卵胞発育のための調節卵巣刺激は、これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがないと判断されるものを対象とすること。卵管性不妊症で薬物療法及び卵管形成術で治癒不可能と思われる患者、乏精子症で他の方法では妊娠不可能と判断される場合、免疫性不妊症、原因不明不妊症などが対象となる。
対象外患者
妊娠不能な性器奇形、妊娠に不適切な子宮筋腫、原発性卵巣不全又は非性腺内分泌障害(甲状腺、副腎又は下垂体疾患等)が認められる場合は本治療の対象から除外すること。
視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発に使用する場合
対象患者
クロミフェンクエン酸塩療法が奏功しない、自発月経を有するか又はプロゲステロン製剤投与により消退出血の認められる第1度無月経、無排卵周期症、多
対象外患者
妊娠不能な性器奇形、妊娠に不適切な子宮筋腫、原発性卵巣不全又は非性腺内分泌障害(甲状腺、副腎又は下垂体疾患等)が認められる場合は本治療の対象から除外すること。
本剤は黄体形成ホルモンを含有しない製剤であり、黄体形成ホルモンの基礎分泌の認められない患者に対しては無効であるため、これらの患者は本治療の対象から除外すること。また、プロゲステロン製剤投与では反応せず、エストロゲン・プロゲステロン製剤投与により初めて消退出血の認められる第2度無月経の患者では、本剤を単独で用いた場合には低反応が予想されるため、本療法の対象から除外することを考慮すること。
多胎妊娠
性腺刺激ホルモン製剤を用いた不妊治療では多胎妊娠の頻度が高くなる。多胎妊娠は単胎妊娠に比し、流・早産が多いこと、妊娠高血圧症候群などの合併症を起こしやすいこと、低出生体重児出生や奇形等のために周産期死亡率が高いことなどの異常が発生しやすいのでその旨をあらかじめ患者に説明すること(「臨床成績」の項参照)。
日本産科婦人科学会の調査によると、平成
また、全国60施設における性腺刺激ホルモン製剤を用いた排卵誘発法の調査で、双胎以上の多胎妊娠は、妊娠総数716例中123例(17.2%)で、そのうち、双胎が102例(14.2%)、三胎が18例(2.5%)
特に体外受精・胚移植などの生殖補助医療を受ける不妊女性
生殖補助医療を受ける女性の流産率は一般女性より高いのでその旨を患者に十分説明すること。
生殖補助医療後の先天異常の発生率は、自然受胎後に比べわずかに高いとの報告がある
卵巣過剰刺激
本剤の投与に引き続き、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与した場合、卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあるので、次の点に留意し、異常が認められた場合には直ちに本剤及びヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤の投与を中止すること(「4.副作用(1)重大な副作用1)」の項参照)。
患者の自覚症状の有無
卵巣過剰刺激症候群発現初期の警告的な徴候として、重度の骨盤痛、悪心及び嘔吐がある。また、卵巣過剰刺激症候群の症例において、腹痛、腹部膨満、悪心、嘔吐、下痢を含む胃腸症状、呼吸困難及び乏尿などの症状が報告されている。
急激な体重増加の有無(初期の警告的な徴候)
卵巣腫大の有無
内診の他、超音波検査、血清エストラジオール値検査等を行うこと。
<超音波検査>
治療開始前及び治療中に定期的な超音波断層法による卵胞発育検査などを行うこと。卵胞数の過多又は卵巣過剰刺激は超音波検査で確認できる。
<血清エストラジオール値検査>
エストラジオール値が急激に上昇(2倍以上の増加が2〜3日間継続し、極めて高値に達する等)することがあるので注意すること。
臨床所見
卵巣過剰刺激症候群の患者では血液量減少、血液濃縮、電解質平衡障害、腹水、腹腔内出血、胸水、水胸症、急性肺窮迫、血栓塞栓症が発現する可能性がある。
卵巣過剰刺激症候群は妊娠すると、より起こりやすく、より重度に、より持続的になる。それゆえ、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤投与後少なくとも2週間は患者を観察すること。卵巣過剰刺激症候群は本剤投与中止後に発現し、急速に進行して、治療後約7〜10日目にピークになることが最も多い。通常、卵巣過剰刺激症候群は月経開始とともに自然に解消する。もしヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤投与前に卵巣過剰刺激症候群が発生する徴候があれば、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤投与を控えること。
本剤の投与期間中に卵巣が異常に腫大していることがわかった場合には、その治療周期でのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤の投与を控えること(「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照)。これにより卵巣過剰刺激症候群が発現する可能性が減少する。
患者に対しては、あらかじめ次の点を説明すること。
卵巣過剰刺激症候群を引き起こすことがあり、急速に進行して入院加療などが必要な重篤な事象になることがある。
急激な体重の増加又は腹痛、腹部膨満、悪心、嘔吐などの自覚症状が認められた場合には直ちに医師等に相談すること。
多剤療法を受けた不妊症患者で、卵巣その他生殖器官の良性及び悪性腫瘍の発現が報告されている
個人及び家族の既往歴、重度の肥満(肥満指数>30kg/m2)又は血栓形成傾向などの一般的高リスクを有する女性では卵巣過剰刺激症候群が認められなくてもゴナドトロピン治療により静脈・動脈血栓塞栓症のリスクが高くなるおそれがある。これらの女性では
本剤の製造工程において使用しているストレプトマイシン及びフラジオマイシンが微量に残存している可能性がある。これらの成分に感受性を持つ患者に対し過敏症を引き起こす可能性があるので、投与を避けること。
在宅自己注射を行う場合は、患者に投与法及び安全な廃棄方法の指導を行うこと。
自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。また、投与する際の操作方法を指導すること。適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な場合には、直ちに自己投与を中止させるなど適切な処置を行うこと。
使用済みの注射針あるいは注射器を再使用しないように患者に注意を促すこと。
全ての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底すること。同時に、使用済みの針及び注射器を廃棄する容器を提供することが望ましい。
子宮筋腫のある患者[子宮筋腫の発育を促進するおそれがある。]
子宮内膜症のある患者[症状が増悪するおそれがある。]
未治療の子宮内膜増殖症のある患者[子宮内膜増殖症は細胞異型を伴う場合があるため。]
乳癌の既往歴のある患者[乳癌が再発するおそれがある。]
乳癌家族素因が強い患者、乳房結節のある患者、乳腺症の患者又は乳房レントゲン像に異常がみられた患者[症状が増悪するおそれがある。]
投与経路
本剤は皮下又は筋肉内注射にのみ使用すること。
投与部位
繰り返し注射する場合は同一部位を避けること。
投与時
注射部位の疼痛及び漏出を予防するため、ゆっくり投与すること。
使用時
バイアル開封後は速やかに使用し、残液は廃棄すること。
筋肉内注射時
筋肉内注射にあたっては、組織・神経などへの影響を避けるため、下記の点に配慮すること。
神経走行部位を避けるよう注意して注射すること。
注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き部位をかえて注射すること。
本剤による治療後、及び他のゴナドトロピン製剤投与後に卵巣捻転が発現したとの報告がある。卵巣過剰刺激症候群、卵巣
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| クロミフェンクエン酸塩 | 卵胞反応が増強することがある。 | 視床下部レベルで内因性エストロゲンと競合的に受容体と結合し、GnRH及びLH、FSHの分泌を促進する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬 (GnRH アゴニスト) | 卵胞反応を減弱することがある。十分観察し本剤を増量するなど注意すること。 | 下垂体の脱感作により卵胞反応が減弱する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン (hCG) | 卵巣過剰刺激症候群があらわれることがある(「4.副作用(1)重大な副作用1)」の項参照)。 | 血管透過性が亢進される。 |
複数卵胞発育のための調節卵巣刺激の場合、外国臨床試験を含めた承認時までの臨床試験で調査症例1,044例中79例(7.6%)に99件の副作用がみられた。主な副作用は卵巣過剰刺激症候群47
視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発の場合、外国臨床試験を含めた承認時までの臨床試験で調査症例624例中85例(13.6%)に108件の副作用がみられた。主な副作用は卵巣過剰刺激症候群32
(外国臨床試験の結果を含む)
卵巣過剰刺激症候群(4.7%)
本剤の投与に引き続き、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与した場合、卵巣腫大、卵巣捻転、下腹部痛、下腹部緊迫感、腹水・胸水の貯留を伴う卵巣過剰刺激症候群があらわれることがある。重度の卵巣過剰刺激症候群が発生した場合は本剤及びヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤の投与を中止し、患者を入院させて、安静にし、水分と電解質の管理を行い、必要に応じ鎮痛薬を投与する。腹腔、胸腔、心
水分の摂取量と排泄量
体重
ヘマトクリット値
血清及び尿中電解質
尿の比重
BUNとクレアチニン
総蛋白量及びアルブミン・グロブリン比
血液凝固能試験
心電図による高カリウム血症のモニタリング
腹囲
卵巣過剰刺激症候群は卵巣損傷のリスクを増大させるが、肺窮迫又は心タンポナーデなどの処置を必要としない限り、腹水、胸水及び心膜水を除去しないこと。骨盤検査は卵巣
卵巣過剰刺激症候群の管理は、急性期、慢性期、回復期に分けられる。
<急性期>
血管内容積が間質腔へ流出することによって起こる血液濃縮を防ぎ、血栓塞栓障害や腎臓損傷のリスクを最小限に抑えること。血管内容積の減少を許容可能な範囲に維持した上で、電解質を正常化させること。欠損した血管内容積を完全に補正することにより、間質腔の体液貯留が許容不可能なまで増加することがある。一定量の補液、電解質、ヒト血清アルブミンの点滴及び水分の摂取量と排泄量の厳密なモニタリングにより管理すること。高カリウム血症に関するモニタリングも行うこと。
<慢性期>
急性期の患者を安定化させた後、カリウム、ナトリウム、水分を厳しく制限し、間質腔の過剰な体液の蓄積を抑えること。
<回復期>
間質腔の体液が血管内へ戻ることにより、ヘマトクリット値の低下や水分摂取に伴わない尿排泄量の増加が観察される。腎臓において間質腔の体液排泄能力が低下すると、末梢又は肺の浮腫が発生することもある。回復期では、肺の浮腫に対処するために必要であれば利尿薬を使用してもよい。
なお、利尿薬は血管内容積の減少を促進することがあるので、回復期以外は使用を避けること。
血栓塞栓症(頻度不明注))
血栓塞栓症が起こることがある。
流産(0.3%)、子宮外妊娠(0.1%)、多胎妊娠(29.0%)
アレルギー反応(頻度不明注))
注)自発報告又は海外において報告された頻度を算出できない副作用のため頻度不明とした。
(外国臨床試験の結果を含む)
| 頻度不明注) | 0.5〜1%未満 | 0.5%未満 | |
| 精神神経系 | 頭痛 | ||
| 消化管 | 腹部不快感、便秘、下痢 | 下腹部痛、嘔気、腹痛 | |
| 女性生殖器 | 卵巣 |
腹痛(産婦人科系) | 卵巣捻転、卵巣腫大 |
| 投与部位 | 挫傷、発赤、腫脹、かゆみ | 注射部疼痛 | |
| その他 | 腹部腫脹、腹部膨満 |
注)自発報告又は海外において報告された頻度を算出できない副作用のため頻度不明とした。
フォリスチム注50
フォリスチム注75
フォリスチム注150
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