<効能共通>
1.1 本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等が報告されており、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致死的な経過をたどった症例が報告されているので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用すること。また、本剤投与後に有害事象が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。[1.2.1、1.2.2、2.2、2.5、8.1、8.2、9.1.1-9.1.3、11.1.1、15.1.1-15.1.3参照]
1.2 感染症
1.2.1 重篤な感染症
敗血症、肺炎、真菌感染症を含む日和見感染症等の致死的な感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発現に注意すること。[1.1、2.5、8.1、9.1.1、9.1.3、11.1.1、15.1.1参照]
1.2.2 結核
播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎、リンパ節等)を含む結核が報告されている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核等の感染症について診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤投与前に適切な抗結核薬を投与すること。ツベルクリン反応検査等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されている。[1.1、2.2、8.2、9.1.2、11.1.1参照]
1.3 本剤についての十分な知識と適応疾患の治療の知識・経験をもつ医師が使用すること。
<関節リウマチ>
1.4 本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること。
<効能共通>
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 活動性結核の患者[症状が悪化するおそれがある。][1.1、1.2.2、8.2、9.1.2、11.1.1参照]
2.3 好中球数が500/mm3未満の患者[8.3、9.1.9、11.1.3参照]
2.4 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]
<関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症>
2.5 重篤な感染症(敗血症等)の患者[症状が悪化するおそれがある。][1.1、1.2.1、8.1、9.1.1、9.1.3、11.1.1、15.1.1参照]
2.6 重度の腎機能障害を有する患者[7.3、9.2.1、16.6.1参照]
2.7 リンパ球数が500/mm3未満の患者[8.3、9.1.10、11.1.3参照]
2.8 ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者[8.3、9.1.11、11.1.3参照]
<SARS-CoV-2による肺炎>
2.9 透析患者又は末期腎不全(eGFRが15mL/分/1.73m2未満)の患者[7.8、9.2.2、16.6.1参照]
2.10 リンパ球数が200/mm3未満の患者[8.3、9.1.10、11.1.3参照]
関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
アトピー性皮膚炎注)
○SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)
○円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)
注)最適使用推進ガイドライン対象
<関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症>
通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。
<SARS-CoV-2による肺炎>
通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、総投与期間は14日間までとする。
<効能共通>
8.1 本剤は、免疫反応に関与するJAKファミリーを阻害するので、感染症に対する宿主免疫能に影響を及ぼす可能性がある。本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や増悪に注意すること。また、患者に対し、発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導すること。[1.1、1.2.1、2.5、9.1.1、9.1.3参照]
8.2 本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。本剤投与中は胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意すること。患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること。[1.1、1.2.2、2.2、9.1.2参照]
8.3 好中球減少、リンパ球減少及びヘモグロビン減少があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に好中球数、リンパ球数及びヘモグロビン値を確認すること。[2.3、2.7、2.8、2.10、9.1.9-9.1.11、11.1.3参照]
8.4 ヘルペスウイルスを含むウイルスの再活性化(帯状疱疹等)が報告されている。また、日本人関節リウマチ患者で認められた重篤な感染症のうち多くが重篤な帯状疱疹であったこと、播種性帯状疱疹も認められていることから、ヘルペスウイルス等の再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。徴候や症状の発現が認められた場合には、患者に受診するよう説明し、本剤の投与を中断し速やかに適切な処置を行うこと。また、ヘルペスウイルス以外のウイルスの再活性化にも注意すること。[11.1.1参照]
8.5 抗リウマチ生物製剤によるB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されているので、本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。[9.1.7参照]
8.6 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。
8.7 総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール及びトリグリセリドの上昇等の脂質検査値異常があらわれることがある。本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認すること。臨床上必要と認められた場合には、脂質異常症治療薬の投与等の適切な処置を考慮すること。
8.8 トランスアミナーゼ値の上昇があらわれることがあるので、本剤投与中は、観察を十分に行うこと。トランスアミナーゼ値が基準値上限の5〜10倍以上に上昇した症例も報告されている。[9.3、11.1.4参照]
8.9 悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤との因果関係は明らかではないが、悪性腫瘍の発現には注意すること。[15.1.2、15.1.3参照]
<アトピー性皮膚炎>
8.10 本剤が疾病を完治させる薬剤でなく、本剤投与中も保湿外用剤等を併用する必要があることを患者に対して説明し、患者が理解したことを確認したうえで投与すること。
8.11 本剤は免疫抑制作用を有することから、皮膚バリア機能が低下しているアトピー性皮膚炎患者への投与に際しては十分な観察を行い、皮膚感染症の発現に注意すること。アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において重篤な皮膚感染症が報告されている。
<SARS-CoV-2による肺炎>
8.12 本剤投与時には、やむを得ない場合を除き、抗凝固薬の投与等による血栓塞栓予防を行うこと。[11.1.6参照]
<円形脱毛症>
8.13 本剤が疾病を完治させる薬剤でないことを患者に対して説明し、患者が理解したことを確認したうえで投与すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 感染症(関節リウマチ、アトピー性皮膚炎又は円形脱毛症の場合は重篤な感染症、SARS-CoV-2による肺炎の場合はSARS-CoV-2による肺炎を除く)の患者又は感染症が疑われる患者[1.1、1.2.1、2.5、8.1、11.1.1参照]
9.1.2 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)又は結核感染が疑われる患者
(1)結核の既感染者では、結核を活動化させるおそれがある。[1.1、1.2.2、2.2、8.2、11.1.1参照]
(2)結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として本剤投与前に適切な抗結核薬を投与すること。[1.1、1.2.2、2.2、8.2、11.1.1参照]
・胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
・結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
・インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、既感染が強く疑われる患者
・結核患者との濃厚接触歴を有する患者
9.1.3 易感染性の状態にある患者
感染症を発現するリスクが高い。[1.1、1.2.1、2.5、8.1、11.1.1参照]
9.1.4 腸管憩室のある患者
消化管穿孔があらわれるおそれがある。[11.1.2参照]
9.1.5 間質性肺炎の既往歴のある患者
定期的に問診を行うなど、注意すること。間質性肺炎があらわれるおそれがある。[11.1.5参照]
9.1.6 静脈血栓塞栓症のリスクを有する患者[11.1.6参照]
9.1.7 B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)
肝機能検査値やHBV DNAのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。抗リウマチ生物製剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。なお、活動性B型肝炎の患者は臨床試験では除外されている。[8.5参照]
9.1.8 C型肝炎患者
臨床試験では除外されている。
9.1.9 好中球減少(好中球数500/mm3未満を除く)のある患者
好中球数が低い患者(1000/mm3未満)については投与を開始しないことが望ましい。好中球減少が更に悪化するおそれがある。[2.3、8.3、11.1.3、17.1.9参照]
9.1.10 リンパ球減少(関節リウマチ、アトピー性皮膚炎又は円形脱毛症の場合はリンパ球数500/mm3未満、SARS-CoV-2による肺炎の場合はリンパ球数200/mm3未満を除く)のある患者
リンパ球減少が更に悪化するおそれがある。[2.7、2.10、8.3、11.1.3、17.1.9参照]
9.1.11 ヘモグロビン値減少(関節リウマチ、アトピー性皮膚炎又は円形脱毛症の場合はヘモグロビン値8g/dL未満を除く)のある患者
ヘモグロビン減少が更に悪化するおそれがある。[2.8、8.3、11.1.3参照]
9.2 腎機能障害患者
腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加するため、副作用が強くあらわれるおそれがある。
<関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症>
9.2.1 重度の腎機能障害患者
投与しないこと。[2.6、7.3、16.6.1参照]
<SARS-CoV-2による肺炎>
9.2.2 透析患者又は末期腎不全(eGFRが15mL/分/1.73m2未満)の患者
投与しないこと。[2.9、7.8、16.6.1参照]
9.2.3 重度の腎機能障害患者(透析患者又は末期腎不全の患者を除く)
重度の腎機能障害(15≦eGFR<30mL/分/1.73m2)がある患者に対して治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、2mgを48時間ごとに投与することができる。本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること。[7.8、16.6.1参照]
<効能共通>
9.2.4 中等度の腎機能障害患者
2mg 1日1回投与に減量し、慎重に投与すること。[7.3、7.8、16.6.1参照]
9.2.5 軽度の腎機能障害患者[7.3、7.8、16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
副作用が強くあらわれるおそれがある。重度の肝機能障害を有する患者は臨床試験で除外されている。[8.8、11.1.4参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な女性には、本剤投与中及び本剤投与終了後少なくとも1月経周期は適切な避妊を行うよう指導すること。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。
動物実験では催奇形性が報告されており、ヒトに本剤を投与したときの血漿中濃度と比較したとき、催奇形性に関する安全域はラット及びウサギでそれぞれ2.3倍及び6.3倍であった。また、ラットで受胎能、胎児の発達、出生児の体重への影響が報告されている。雌ラットの受胎能及び初期胚発生に関する安全域は4.1倍、出生前及び出生後の発生に関する安全域は1.8倍であった
9.6 授乳婦
本剤投与中は授乳しないことが望ましい。ラットで乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
用量に留意して、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。重篤な有害事象の発現率の上昇が認められている。また、本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下している場合が多い。[16.5参照]
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
<SARS-CoV-2による肺炎>
14.2 薬剤投与時の注意
本剤の経口投与が困難な場合、懸濁させた上で経口、胃瘻、経鼻又は経口胃管での投与を考慮できる。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 関節リウマチ患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験4試験及び長期試験の併合解析において、100人・年あたりの重篤な感染症の発現率(95%信頼区間)は、本剤2mg投与群で3.55(2.07,5.68)、4mg投与群で5.77(3.77,8.45)であった。アトピー性皮膚炎患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験6試験の16週時以降の長期試験を含む併合解析において、各試験の被験者数で調整した100人・年あたりの重篤な感染症の調整済み発現率(発現率:95%信頼区間)は、本剤2mg投与群で1.21(1.48:0.6,2.9)、4mg群で3.1(3.0:1.8,4.8)であった。円形脱毛症患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験2試験の36週時以降のデータを含む併合解析において、100人・年あたりの重篤な感染症の発現率(95%信頼区間)は、本剤2mg投与群で0.5(0.1,1.7)、4mg群で0.7(0.2,1.6)であった。[1.1、1.2.1、2.5参照]
15.1.2
関節リウマチ患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験4試験の24週時以降の長期試験を含む併合解析において、100人・年あたりの悪性腫瘍の発現率は、本剤2mg投与群で0.41(95%信頼区間:0.05,1.47、発現割合:0.4%、2/479例)、4mg投与群で0.87(95%信頼区間:0.24,2.22、発現割合:0.8%、4/479例)であった。
関節リウマチ患者を対象とした長期試験を含む臨床試験9試験の併合解析において、本剤投与群での年齢・性別で調整して算出した悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)のSIR(標準化罹患比)は0.96(95%信頼区間:0.67,1.35)であった。既存の抗リウマチ薬投与下の関節リウマチ患者で報告されている悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)のSIR 1.05(95%信頼区間:1.01,1.09)
また投与期間別の発現状況は表の通りであった。[1.1、8.9参照]
| 投与期間(評価対象例数・曝露期間) | %(例数) | 発現率(/100人・年)(95%信頼区間) |
| 全体(3492例・5233.3人・年) | 1.1%(38) | 0.73(0.51,1.00) |
| 0〜24週(3492例・1530.7人・年) | 0.2%(7) | 0.46(0.18,0.94) |
| 24〜48週(3114例・1289.2人・年) | 0.3%(10) | 0.78(0.37,1.43) |
| 48〜72週(2583例・1051.9人・年) | 0.5%(12) | 1.14(0.59,1.99) |
| 72〜96週(1940例・716.0人・年) | 0.3%(5) | 0.70(0.23,1.63) |
| 96週〜(1167例・645.4人・年) | 0.3%(4) | 0.62(0.17,1.59) |
アトピー性皮膚炎患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験6試験の16週時以降の長期試験を含む併合解析において、悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現は認められなかった。また、各試験の被験者数で調整した100人・年あたりの非黒色腫皮膚癌の調整済み発現率は、本剤2mg投与群で0.14(発現率:0.18、95%信頼区間:0.0,1.0、調整済み発現割合:0.1%、1/584例)、4mg投与群で0(0/497例)であった。
アトピー性皮膚炎患者を対象とした長期試験を含む臨床試験8試験の併合解析において、本剤群での100人・年あたり悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率は、0.21(95%信頼区間:0.1,0.5、発現割合:0.2%、6/2562例)であり、非黒色腫皮膚癌の発現率は、0.24(95%信頼区間:0.1,0.5、発現割合:0.3%、7/2562例)であった。
円形脱毛症患者を対象とした本剤2mg投与群及び4mg投与群がある二重盲検比較試験2試験の36週時以降のデータを含む併合解析において、100人・年あたりの悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率は、本剤4mg投与群で0.3(95%信頼区間:0.0,1.0、発現割合:0.4%、2/540例)であり、本剤2mg投与群で発現は認められなかった。非黒色腫皮膚癌の発現率は、本剤2mg投与群で0.2(95%信頼区間:0.0,1.3、発現割合:0.3%、1/365例)であり、本剤4mg投与群で発現は認められなかった。
円形脱毛症患者を対象とした臨床試験2試験の併合解析において、本剤投与群での100人・年あたりの悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率は、0.2(95%信頼区間:0.0,0.5、発現割合:0.2%、3/1244例)であり、非黒色腫皮膚癌の発現率は、0.1(95%信頼区間:0.0,0.4、発現割合:0.2%、2/1244例)であった。[1.1、8.9参照]
15.1.3 心血管系事象のリスク因子を有する関節リウマチ患者を対象としたJAK阻害剤トファシチニブクエン酸塩の海外臨床試験の結果、主要評価項目である主要な心血管系事象(Major Adverse Cardiovascular Events:MACE)及び悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率について、TNF阻害剤群に対するハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ1.33(0.91,1.94)及び1.48(1.04,2.09)であり、95%信頼区間上限は予め設定していた非劣性マージン1.8を超え、TNF阻害剤群に対する非劣性が検証されなかったことが報告されている。また、本剤でも、国内市販後の自発報告において、心血管系事象の発現が認められている。[1.1、8.9参照]
15.2 非臨床試験に基づく情報
本剤はJAK阻害作用を有することから免疫系及び造血系へ影響を及ぼす可能性があり、非臨床試験ではリンパ球数及び赤血球数の減少等に加え、免疫抑制に起因する二次的な作用(毛包虫症並びに細菌、原虫及び酵母の感染)がみられた。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| プロベネシド[7.1、16.7.1参照] | 本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。本剤とプロベネシド併用時に本剤のAUCが2倍に増加した。2mg 1日1回投与に減量するなど、用量に注意すること。 | OAT3を阻害することにより本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 感染症
帯状疱疹(2.8%)、肺炎(0.6%)、ニューモシスティス肺炎(0.1%未満)、敗血症(0.1%未満)、結核(0.1%未満)等の重篤な感染症(日和見感染症を含む)があらわれ、致死的な経過をたどることがある。本剤投与中に重篤な感染症を発現した場合は、感染症がコントロールできるようになるまでは投与を中止すること。[1.1、1.2.1、1.2.2、2.2、2.5、8.4、9.1.1-9.1.3参照]
11.1.2 消化管穿孔(0.1%未満)
異常が認められた場合には投与を中止するとともに、腹部X線、CT等の検査を実施するなど十分に観察し、適切な処置を行うこと。[9.1.4参照]
11.1.3 好中球減少(0.9%)、リンパ球減少(1.1%)、ヘモグロビン減少(0.1%)
好中球数
本剤投与開始後、継続して500〜1000/mm3である場合は、1000/mm3を超えるまでは本剤の投与を中断すること。
リンパ球数
本剤投与開始後、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎又は円形脱毛症患者では500/mm3未満、SARS-CoV-2による肺炎患者では200/mm3未満になった場合には、本剤の投与を中断すること。
ヘモグロビン値
関節リウマチ、アトピー性皮膚炎又は円形脱毛症患者において、本剤投与開始後、8g/dL未満になった場合には、正常化するまで本剤の投与を中断すること。
[2.3、2.7、2.8、2.10、8.3、9.1.9-9.1.11参照]
11.1.4 肝機能障害、黄疸
AST(0.8%)、ALT(1.0%)の上昇等を伴う肝機能障害、黄疸(頻度不明)があらわれることがある。[8.8、9.3参照]
11.1.5 間質性肺炎(0.1%未満)
発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部X線検査、胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともにニューモシスティス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行うこと。[9.1.5参照]
11.1.6 静脈血栓塞栓症(0.2%注1)、1.0%注2))
肺塞栓症及び深部静脈血栓症があらわれることがある。[8.12、9.1.6参照]
注1)関節リウマチ、及びアトピー性皮膚炎及び円形脱毛症患者を対象とした臨床試験における発現割合
注2)SARS-CoV-2による肺炎患者を対象とした臨床試験における発現割合
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 10%以上 | 1〜10%未満 | 0.1〜1%未満 | 頻度不明 | |
| 胃腸障害 | 悪心、腹痛 | |||
| 感染症及び寄生虫症 | 上気道感染(鼻炎、上咽頭炎、副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、口腔咽頭痛、咽頭炎、咽頭扁桃炎、扁桃炎、喉頭炎、喉頭蓋炎、気管炎を含む)、帯状疱疹、単純ヘルペス(ヘルペス性状湿疹、性器ヘルペス、カポジ水痘様発疹、眼部単純ヘルペス、口腔ヘルペスを含む)、尿路感染 | |||
| 精神神経系 | 頭痛 | |||
| 皮膚及び皮下組織障害 | ざ瘡 | 発疹、顔面腫脹、蕁麻疹 | ||
| 臨床検査 | LDLコレステロール上昇 | ALT上昇、AST上昇、血小板増加症、トリグリセリド上昇、CK上昇 | ||
| その他 | 体重増加 |
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