本剤の耐性菌の発現を防ぐため,「効能・効果に関連する使用上の注意」,「用法・用量に関連する使用上の注意」の項を熟読の上,適正使用に努めること。
本剤の成分によるショックの既往歴のある患者
<適応菌種>
バンコマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
<適応症>
敗血症,感染性心内膜炎,外傷・熱傷及び手術創等の二次感染,骨髄炎,関節炎,肺炎,肺膿瘍,膿胸,腹膜炎,化膿性髄膜炎
通常,成人にはバンコマイシン塩酸塩として1日2g(力価)を1回0.5g(力価)6時間ごと又は1回1g(力価)12時間ごとに分割して,それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
なお,年齢,体重,症状により適宜増減する。
高齢者には,1回0.5g(力価)12時間ごと又は1回1g(力価)24時間ごとに,それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
なお,年齢,体重,症状により適宜増減する。
小児,乳児には,1日40mg(力価)/kgを2〜4回に分割して,それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
新生児には,1回投与量を10〜15mg(力価)/kgとし,生後1週までの新生児に対しては12時間ごと,生後1ヵ月までの新生児に対しては8時間ごとに,それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
本剤によるショック,アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので,次の措置をとること。
事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお,抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
投与に際しては,必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
投与開始から投与終了後まで,患者を安静の状態に保たせ,十分な観察を行うこと。特に,投与開始直後は注意深く観察すること。
本剤はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
投与期間中は血中濃度をモニタリングすることが望ましい。
腎障害のある患者[排泄が遅延し,蓄積するため,血中濃度をモニタリングするなど慎重に投与すること。]
肝障害のある患者[肝障害が悪化することがある。]
高齢者[「高齢者への投与」の項参照]
低出生体重児,新生児[「小児等への投与」の項参照]
徴候,症状
急性腎不全等の腎障害,難聴等の第8脳神経障害を起こすおそれがある。
処置
HPM(high performance membrane)を用いた血液透析により血中濃度を下げることが有効であるとの報告がある。
調製方法
本剤1g(力価)バイアルに注射用水20mLを加えて溶解し,更に0.5g(力価)に対し100mL以上の割合で日局生理食塩液又は日局5%ブドウ糖注射液等の輸液に加えて希釈し,60分以上かけて点滴静注すること。
調製後は速やかに使用すること。なお,やむを得ず保存を必要とする場合でも,室温,冷蔵庫保存共に24時間以内に使用すること。
調製時
現在までに,次の注射剤と混合すると,配合変化を起こすことが確認されているので,混注しないこと。
アミノフィリン,フルオロウラシル製剤と混合すると外観変化と共に経時的に著しい力価低下を来すことがある。
ヒドロコルチゾンコハク酸エステル,セフォタキシム,セフチゾキシム,セフメノキシム,セフォゾプラン,パニペネム・ベタミプロン,アズトレオナム製剤と混合すると著しい外観変化を起こすことがある。
投与時
血栓性静脈炎が起こることがあるので,薬液の濃度及び点滴速度に十分注意し,繰り返し投与する場合は,点滴部位を変更すること。
薬液が血管外に漏れると壊死が起こるおそれがあるので,薬液が血管外に漏れないように慎重に投与すること。
投与経路
筋肉内注射は痛みを伴うので行わないこと。
外国で急速静注により心停止を起こしたとの報告がある。
安定性試験
長期保存試験(25℃)の結果より,バンコマイシン塩酸塩点滴静注用1g「日医工」は通常の市場流通下において2年間安定であることが確認された。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 全身麻酔薬チオペンタール等 | 同時に投与すると,紅斑,ヒスタミン様潮紅,アナフィラキシー反応等の副作用が発現することがある。全身麻酔の開始1時間前には本剤の点滴静注を終了する。 | 全身麻酔薬には,アナフィラキシー作用,ヒスタミン遊離作用を有するものがあり,本剤にもヒスタミン遊離作用がある。しかし,相互作用の機序は不明 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 腎毒性及び聴器毒性を有する薬剤アミノグリコシド系抗生物質アルベカシントブラマイシン等白金含有抗悪性腫瘍剤シスプラチンネダプラチン等 | 腎障害,聴覚障害が発現,悪化するおそれがあるので,併用は避けること。やむを得ず併用する場合は,慎重に投与する。 | 機序:両剤共に腎毒性,聴器毒性を有するが,相互作用の機序は不明危険因子:腎障害のある患者,高齢者,長期投与の患者等 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 腎毒性を有する薬剤アムホテリシンBシクロスポリン等 | 腎障害が発現,悪化するおそれがあるので,併用は避けること。やむを得ず併用する場合は,慎重に投与する。 | 機序:両剤共に腎毒性を有するが,相互作用の機序は不明危険因子:腎障害のある患者,高齢者,長期投与の患者等 |
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
(以下,すべて頻度不明)
ショック,アナフィラキシー
ショック,アナフィラキシー(呼吸困難,全身潮紅,浮腫等)を起こすことがあるので,観察を十分に行い,症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
急性腎不全,間質性腎炎
急性腎不全,間質性腎炎等の重篤な腎障害があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止することが望ましいが,やむを得ず投与を続ける場合には減量するなど慎重に投与すること。
汎血球減少,無顆粒球症,血小板減少
汎血球減少,無顆粒球症,血小板減少があらわれることがあるので,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN),皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群),剥脱性皮膚炎
中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群,剥脱性皮膚炎があらわれることがあるので,観察を十分に行い,このような症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
薬剤性過敏症症候群
初期症状として発疹,発熱がみられ,更に肝機能障害,リンパ節腫脹,白血球増加,好酸球増多,異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがあるので,観察を十分に行い,このような症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。なお,ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルスの再活性化を伴うことが多く,投与中止後も発疹,発熱,肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。
第8脳神経障害
眩暈,耳鳴,聴力低下等の第8脳神経障害があらわれることがあるので,聴力検査等観察を十分に行うこと。また,このような症状があらわれた場合には投与を中止することが望ましいが,やむを得ず投与を続ける場合には慎重に投与すること。
偽膜性大腸炎
偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎があらわれることがあるので,腹痛,頻回の下痢があらわれた場合には,直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
肝機能障害,黄疸
AST(GOT),ALT(GPT),Al-P等の上昇,黄疸があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 | |
| 過敏症 注1) | 発疹,そう痒,発赤,蕁麻疹,顔面潮紅,線状IgA水疱症 |
| 肝臓 注2) | AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇,Al-P上昇,ビリルビン上昇,LDH上昇,γ-GTP上昇,LAP上昇 |
| 腎臓 注3) | BUN上昇,クレアチニン上昇 |
| 血液 | 貧血,白血球減少,血小板減少,好酸球増多 |
| 消化器 | 下痢,嘔気,嘔吐,腹痛 |
| その他 | 発熱,静脈炎,血管痛,皮膚血管炎,悪寒,注射部疼痛 |
注1:症状(異常)が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。
注2:症状(異常)が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
注3:症状(異常)が認められた場合には,投与を中止することが望ましいが,やむを得ず投与を続ける場合には適切な処置を行うこと。
バンコマイシン塩酸塩点滴静注用1g「日医工」
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