1.1 本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。
適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の電子添文を参照して十分注意すること。
また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
1.2 本剤の小児悪性固形腫瘍での使用は、小児のがん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで実施すること。[9.7.2参照]
2.1 心機能異常又はその既往歴のある患者[心筋障害があらわれることがある。]
2.2 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
○ドキソルビシン塩酸塩通常療法
下記諸症の自覚的及び他覚的症状の緩解
悪性リンパ腫
肺癌
消化器癌(胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)
乳癌
膀胱腫瘍
骨肉腫
以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)
子宮体癌(術後化学療法、転移・再発時化学療法)
悪性骨・軟部腫瘍
悪性骨腫瘍
多発性骨髄腫
小児悪性固形腫瘍(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、腎芽腫等)
○M-VAC療法
尿路上皮癌
<ドキソルビシン塩酸塩通常療法>
6.1 肺癌、消化器癌(胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、乳癌、骨肉腫
6.1.1 1日量、ドキソルビシン塩酸塩として10mg(0.2mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回4〜6日間連日静脈内ワンショット投与後、7〜10日間休薬する。
この方法を1クールとし、2〜3クール繰り返す。
6.1.2 1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20mg(0.4mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回2〜3日間静脈内にワンショット投与後、7〜10日間休薬する。
この方法を1クールとし、2〜3クール繰り返す。
6.1.3 1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20〜30mg(0.4〜0.6mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回、3日間連日静脈内にワンショット投与後、18日間休薬する。
この方法を1クールとし、2〜3クール繰り返す。
6.1.4 総投与量はドキソルビシン塩酸塩として500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
6.2 悪性リンパ腫
6.2.1 上記6.1.1〜6.1.3に従う。
6.2.2 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、以下のとおりとする。
(1)ドキソルビシン塩酸塩として1日1回25〜50mg(力価)/m2(体表面積)を静脈内投与し、繰り返す場合には少なくとも2週間以上の間隔をあけて投与する。
(2)ドキソルビシン塩酸塩として、1日目は40mg(力価)/m2(体表面積)、8日目は30mg(力価)/m2(体表面積)を静脈内投与し、その後20日間休薬する。この方法を1クールとし、投与を繰り返す。
投与に際しては、日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、必要に応じて輸液により希釈する。なお、年齢、併用薬、患者の状態に応じて適宜減量する。また、ドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
6.3 乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
6.3.1 シクロホスファミド水和物との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与後、
この方法を1クールとし、4クール繰り返す。
なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
6.4 子宮体癌(術後化学療法、転移・再発時化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
6.4.1 シスプラチンとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与し、その後休薬し3週毎繰り返す。
なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
6.5 悪性骨・軟部腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
6.5.1 イホスファミドとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20〜30mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回3日間連続で静脈内投与し、その後休薬し3〜4週毎繰り返す。
なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
本剤単剤では6.1.3、6.1.4に従う。
6.6 悪性骨腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
6.6.1 シスプラチンとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回3日間連続で静脈内投与または点滴静注し、その後3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
なお、疾患、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
6.7 多発性骨髄腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
6.7.1 ビンクリスチン硫酸塩、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量ドキソルビシン塩酸塩として9mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、必要に応じて輸液に希釈して24時間持続静注する。これを4日間連続で行う。その後休薬し、3〜4週毎繰り返す方法を1クールとする。
なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
6.8 小児悪性固形腫瘍(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、腎芽腫等)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
6.8.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、以下のとおりとする。
(1)1日20〜40mg(力価)/m2(体表面積)を24時間持続点滴
1コース20〜80mg(力価)/m2(体表面積)を24〜96時間かけて投与し、繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与する。1日投与量は最大40mg(力価)/m2(体表面積)とする。
(2)1日1回20〜40mg(力価)/m2(体表面積)を静注または点滴静注
1コース20〜80mg(力価)/m2(体表面積)を投与し、繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与する。1日投与量は最大40mg(力価)/m2(体表面積)とする。
投与に際しては、日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、必要に応じて輸液により希釈する。なお、年齢、併用薬、患者の状態に応じて適宜減量する。また、ドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
6.9 膀胱腫瘍
6.9.1 1日量、ドキソルビシン塩酸塩として30〜60mg(力価)を20〜40mLの日局生理食塩液に1〜2mg(力価)/mLになるように溶解し、1日1回連日または週2〜3回膀胱腔内に注入する。
また、年齢・症状に応じて適宜増減する。
(ドキソルビシン塩酸塩の膀胱腔内注入法)
ネラトンカテーテルで導尿し、十分に膀胱腔内を空にしたのち同カテーテルより、ドキソルビシン塩酸塩30〜60mg(力価)を20〜40mLの日局生理食塩液に1〜2mg(力価)/mLになるように溶解して膀胱腔内に注入し、1〜2時間膀胱把持する。
<M-VAC療法>
6.10 尿路上皮癌
6.10.1 メトトレキサート、ビンブラスチン硫酸塩及びシスプラチンとの併用において、通常、ドキソルビシン塩酸塩を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、成人1回30mg(力価)/m2(体表面積)を静脈内に注射する。
なお、年齢、症状により適宜減量する。
標準的な投与量及び投与方法は、メトトレキサート30mg/m2を1日目に投与した後、2日目にビンブラスチン硫酸塩3mg/m2、ドキソルビシン塩酸塩30mg(力価)/m2及びシスプラチン70mg/m2を静脈内に注射する。15日目及び22日目に、メトトレキサート30mg/m2及びビンブラスチン硫酸塩3mg/m2を静脈内に注射する。これを1クールとして4週毎に繰り返すが、ドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2以下とする。
<効能共通>
8.1 本剤はドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤とは有効性、安全性、薬物動態が異なる。本剤をドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤の代替として使用しないこと。
また、本剤をドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤と同様の用法・用量で投与しないこと。
8.2 骨髄機能抑制、心筋障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査、心機能検査等)を行うなど患者の状態を十分に観察すること。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。なお、本剤の投与にあたってはG-CSF製剤等の適切な使用に関しても考慮すること。
8.3 本剤の総投与量が500mg/m2を超えると重篤な心筋障害を起こすことが多くなるので注意すること。[11.1.1参照]
8.4 本剤と他の抗悪性腫瘍剤を併用した患者に、二次性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)が発生することがあるので注意すること。
8.5 感染症、出血傾向の発現又は悪化に十分注意すること。[11.1.2参照]
<多発性骨髄腫、小児悪性固形腫瘍(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、腎芽腫等)>
8.6 24時間持続静脈内注射を実施する場合、直接末梢静脈に投与すると薬液の漏出による局所の組織障害を起こすおそれがあるので、中心静脈カテーテルを留置して中心静脈より投与すること。また、血管内留置カテーテルによる感染症の合併に十分注意すること。[7.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 骨髄機能抑制のある患者
骨髄機能をより強く抑制するおそれがある。
9.1.2 感染症を合併している患者
骨髄機能抑制により感染症が悪化するおそれがある。
9.1.3 水痘患者
致命的な全身障害があらわれるおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
副作用が強くあらわれるおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
副作用が強くあらわれるおそれがある。
9.4 生殖能を有する者
小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験(ラット)で、消化器系、泌尿器系及び心臓血管系に催奇形作用が報告されている。
9.6 授乳婦
授乳を避けさせること。ヒト乳汁中へ移行することが報告されている
9.7 小児等
9.7.1 副作用の発現に特に注意すること。
9.7.2 治療終了後も定期的な心機能検査を実施することが望ましい。本剤投与後に遅発性心毒性の発現のリスクが高いとの報告がある。[1.2参照]
9.7.3 低出生体重児、新生児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
用量に留意して患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。高齢者では特に心毒性、骨髄機能抑制があらわれやすく、また、本剤は主として肝臓で代謝されるが、高齢者では肝機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続するおそれがある。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は溶解時のpHにより安定性が低下することがあるので、他の薬剤との混注を避け、日局注射用水又は日局生理食塩液に溶解すること。またフルオロウラシル注射液等のアルカリ性薬剤の調剤に使用したシリンジ(注射筒)を本剤の調製時に使用すると不溶性の凝集物を形成するので避けること。
14.1.2 本剤を日局生理食塩液で溶解する場合は、ドキソルビシン塩酸塩として10mg(力価)当たり1mL以上で速やかに行うこと。微量の日局生理食塩液で溶解を開始すると溶けにくくなることがある。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 皮下、筋肉内投与はしないこと。
14.2.2 腹腔内に投与すると、腸管の癒着を起こすことがあるので、腹腔内投与は避けること。
14.2.3 静脈内投与により血管痛、静脈炎、血栓を起こすおそれがあるので、注射部位、注射方法等に十分注意し、注射速度をできるだけ遅くすること。
14.2.4 静脈内投与に際し薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死を起こすことがあるので、薬液が血管外に漏れないように投与すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
本剤の尿中排泄により尿が赤色になることがある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
ラットに静脈内投与した実験で乳腺腫瘍が発生したとの報告がある。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 投与前の心臓部あるいは縦隔への放射線照射潜在的に心毒性を有する抗悪性腫瘍剤アントラサイクリン系薬剤等 | 心筋障害が増強されるおそれがある。 | 心筋に対する蓄積毒性が増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 他の抗悪性腫瘍剤放射線照射 | 骨髄機能抑制等の副作用が増強することがある。 | 副作用が相互に増強される。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| パクリタキセル | 本剤投与前にパクリタキセルを投与すると、骨髄抑制等の副作用が増強されるおそれがあるので、併用する場合は、パクリタキセルの前に本剤を投与すること。 | 本剤投与前にパクリタキセルを投与すると、本剤の未変化体の血漿中濃度が上昇する。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<用法共通>
11.1.1 心筋障害、心不全(いずれも頻度不明)[8.3参照]
11.1.2 骨髄機能抑制、出血(いずれも頻度不明)
汎血球減少、貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少等の骨髄機能抑制及び出血があらわれることがある。[8.5参照]
11.1.3 ショック(頻度不明)
11.1.4 間質性肺炎(頻度不明)
咳嗽、呼吸困難、発熱等の臨床症状を十分に観察し、異常が認められた場合には、胸部X線、胸部CT等の検査を実施すること。間質性肺炎が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
<膀胱腔内注入法>
11.1.5 萎縮膀胱(頻度不明)
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 | |
| 心臓 | 心電図異常 | 頻脈、不整脈、胸痛 | |
| 肝臓 | 肝障害 | ||
| 腎臓 | 蛋白尿 | ||
| 消化器 | 食欲不振、悪心・嘔吐、口内炎 | 下痢 | |
| 皮膚 | 脱毛 | 色素沈着 | |
| 精神神経系 | 倦怠感、頭痛 | ||
| 泌尿器(膀注時) | 頻尿、排尿痛、膀胱炎 | 血尿 | 残尿感 |
| 呼吸器 | 気胸・血胸(肺転移症例) | ||
| 過敏症 | 発疹 | ||
| その他 | 発熱 | 鼻出血 |
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