本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、再生不良性貧血、造血幹細胞移植又は臓器移植に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
2.1 本剤の試験投与でショック状態等の過敏症が認められた患者[7.1参照]
2.2 重症感染症(肺炎、敗血症等)を合併している患者[感染症が増悪し致命的となることがある。]
2.3 妊婦[9.5参照]
2.4 弱毒生ワクチンを投与中の患者[10.1参照]
○中等症以上の再生不良性貧血
○造血幹細胞移植の前治療
○造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病
○下記の臓器移植後の急性拒絶反応の治療
腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植
<中等症以上の再生不良性貧血>
通常、1日1回体重1kgあたり抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして2.5〜3.75mgを、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液500mLで希釈して、6時間以上かけ緩徐に点滴静注する。投与期間は5日間とする。
<造血幹細胞移植の前治療>
通常、1日1回体重1kgあたり抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして2.5mgを、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液500mLで希釈して、6時間以上かけ緩徐に点滴静注する。投与期間は造血幹細胞移植5日前より4日間とする。
<造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病>
通常、1日1回体重1kgあたり抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして2.5〜3.75mgを、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液500mLで希釈して、6時間以上かけ緩徐に点滴静注する。投与期間は5日間とする。
<臓器移植後の急性拒絶反応の治療>
腎移植の場合
通常、1日1回体重1kgあたり抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして1.5mgを、1バイアル(抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして25mg)あたり、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液50mLで希釈して、6時間以上かけ緩徐に点滴静注する。投与期間は7〜14日間とする。
肝移植、肺移植、膵移植及び小腸移植の場合
通常、1日1回体重1kgあたり抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして1.5mgを、1バイアル(抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして25mg)あたり、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液50mLで希釈して、6時間以上かけ緩徐に点滴静注する。投与期間は最大14日間とする。
心移植の場合
通常、1日1回体重1kgあたり抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして1.5〜2.5mgを、1バイアル(抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして25mg)あたり、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液50mLで希釈して、6時間以上かけ緩徐に点滴静注する。投与期間は最大14日間とする。
<効能共通>
8.1 ショック等重篤な副作用を起こすことがあるので、投与前にショック症状発現時の救急処置対策を考慮しておくこと。投与中は注意して使用し、医師が経過を十分に観察すること。[11.1.1参照]
8.2 本剤の投与前に感染症が認められた場合、感染症の治療を優先し、患者の状態が安定した後、本剤を投与すること。また、投与中並びに投与後に重篤な感染症(ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症等)が発症する場合がある。[11.1.3-11.1.6参照]
8.3 間質性肺炎を起こすことがあるので、咳嗽、呼吸困難、低酸素症等の呼吸器症状に注意すること。[11.1.7参照]
8.4 本剤投与の初期に発熱、悪寒、呼吸困難、悪心、嘔吐、下痢、頻脈、低血圧、高血圧、倦怠感、発疹、頭痛等があらわれることがあるので、その旨を患者にあらかじめ説明しておくこと。また、重度のinfusion reaction(サイトカイン放出症候群を含む)があらわれ、重篤な心障害や肺障害(心筋梗塞、急性呼吸窮迫症候群、肺水腫)に至ることがあるので、投与中は患者を厳密に観察すること。これらの症状を軽減させるため、あらかじめ副腎皮質ホルモン剤等を投与することが望ましい。また、解熱剤、抗ヒスタミン剤の併用も本剤の投与初期に頻発するこれらの症状を軽減する。[11.1.2参照]
8.5 本剤投与時に交差反応性抗体に起因する血小板減少があらわれ、出血傾向が増悪するおそれがあるので、定期的に血小板数を測定し、患者の状態を十分に観察すること。[11.1.8、11.1.9参照]
8.6 本剤投与に先立って、本剤又は他のウサギ血清製剤の治療歴の有無を必ず確認すること。また、本剤の投与後には、患者にウサギ血清製剤を投与した旨を十分認識させるために、本剤の医薬品名を記載した用紙に、使用量、使用期間、病院名、担当医師名を記入し、治療終了後に治療歴として保管するとともに同様の記録を患者に渡すこと。[7.2参照]
8.7 AST、ALTの上昇等を伴う重篤な肝障害、血小板減少、白血球減少があらわれることがあるので、定期的に血液検査を行うこと。[9.3、11.1.8、11.1.10参照]
8.8 急性腎障害があらわれることがあるので、投与に先立って患者が脱水状態にないことを確認すること。[11.1.12参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本剤又は他のウサギ血清製剤の投与歴のある患者
ショックを起こすおそれがある。
9.1.2 ウイルス感染症の患者
本剤の免疫抑制作用により病態を悪化させるおそれがある。
9.1.3 細菌感染症の患者
本剤の免疫抑制作用により病態を悪化させるおそれがある。
9.1.4 真菌感染症の患者
本剤の免疫抑制作用により病態を悪化させるおそれがある。
9.1.5 薬物過敏症の既往歴のある患者
9.1.6 アレルギー素因のある患者
9.1.7 心疾患のある患者
心機能を悪化させるおそれがある。
9.1.8 免疫抑制剤を投与された肝炎ウイルスキャリアの患者
免疫抑制剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎があらわれることがある。また、HBs抗原陰性の患者において、免疫抑制剤の投与開始後にB型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎を発症した症例が報告されている。また、C型肝炎ウイルスキャリアの患者において、免疫抑制剤の投与開始後にC型肝炎の悪化がみられることがある。肝炎ウイルスキャリアの患者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化やC型肝炎の悪化の徴候や症状の発現に注意すること。[11.1.3参照]
9.1.9 急性腎障害の危険性の高い患者
投与量及び投与速度を出来るだけ低くすることが望ましい。[11.1.12参照]
9.2 腎機能障害患者
腎機能を悪化させるおそれがある。[11.1.12参照]
9.3 肝機能障害患者
肝機能を悪化させるおそれがある。[8.7、11.1.10参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないこと。[2.3参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
慎重に投与すること。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能(腎機能、肝機能、免疫機能等)が低下している。
13.1 症状
本剤の過量投与により、白血球減少、血小板減少が発現することがあるので、用法及び用量に定められている投与量を超えて投与しないこと。[11.1.8参照]
13.2 処置
本剤の過量投与が疑われた場合は、輸血、血液造血因子、抗感染症薬の投与等の支持療法を行うこと。また、必要に応じ無菌管理を考慮し、血液学的検査を頻回に行い、患者の状態を十分に観察すること。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 溶解
(1)本剤に日局注射用水5mLを加える。粉末が完全に溶解するまで、できるだけ泡を立てないよう静かに円を描くように回して溶解する。急激な振盪溶解を避けること。
(2)本剤は蛋白製剤であるため、その溶液はわずかに混濁することがあるが、本剤の薬効には影響を及ぼさない。なお、これ以外の外観上の異常を認めた場合には使用しないこと。
(3)本剤には防腐剤が含まれていないので、溶解後は速やかに使用すること。
14.1.2 希釈
<効能共通>
(1)生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液以外の製剤との配合は避けること。
<中等症以上の再生不良性貧血、造血幹細胞移植の前治療、造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病>
(2)生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液500mLで希釈すること。
<臓器移植後の急性拒絶反応の治療>
(3)1バイアル(抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとして25mg)あたり、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液50mLで希釈すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 1回の投与は6時間以上かけて注入するよう流速を設定すること。
14.2.2 点滴静注する際には、点滴セットにインラインフィルター(ポアサイズ0.2ミクロン)を使用すること。
14.2.3 注入後に残った残液は廃棄すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
海外市販後の自発報告において本剤投与後の核酸増幅検査でB型肝炎ウイルスが陽性であった症例が1例報告されている。
15.2 非臨床試験に基づく情報
2週間反復静脈内投与試験(サル)において赤血球パラメータ(赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン)の減少がみられた。
外箱開封後は遮光して保存すること。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 弱毒生ワクチンおたふくかぜ、麻疹、風疹及びこれらの混合ワクチン等[2.4参照] | 本剤投与後、弱毒生ワクチンを接種する場合には、発病するおそれがある。 | 本剤の免疫抑制作用による。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 他の免疫抑制剤シクロスポリン等 | 過度の免疫抑制による感染症あるいはリンパ増殖性疾患を惹起する危険性があるので、併用する場合には慎重に投与すること。 | 相加的に免疫抑制作用が増強される可能性がある。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(頻度不明)、アナフィラキシー(0.4%)
呼吸困難、血圧低下、頻脈等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.1参照]
11.1.2 重度のinfusion reaction(サイトカイン放出症候群を含む)(頻度不明)
重篤な心障害や肺障害(心筋梗塞、急性呼吸窮迫症候群、肺水腫)に至ることがあるので、発熱、悪寒、呼吸困難、悪心、嘔吐、下痢、頻脈、低血圧、高血圧、倦怠感、発疹、頭痛等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.4参照]
11.1.3 感染症(肺炎、敗血症等)(11.2%)
ウイルス(アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペス等)、細菌、真菌(アスペルギルス等)等による重篤な感染症があらわれることがある。また、免疫抑制剤を投与されたB型又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎やC型肝炎の悪化があらわれることがある。[8.2、9.1.8参照]
11.1.4 発熱性好中球減少症(頻度不明)[8.2参照]
11.1.5 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.2参照]
11.1.6 BKウイルス腎症(頻度不明)
減量又は投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.2参照]
11.1.7 間質性肺炎(2.1%)
発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線検査異常等が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.3参照]
11.1.8 血小板減少(31.0%)、白血球減少(頻度不明)[8.5、8.7、13.1参照]
11.1.9 出血傾向
脳出血(1.7%)、下血、胃腸出血(いずれも1.2%)、くも膜下出血、肺出血、肺胞出血(いずれも0.4%)等の出血があらわれることがある。[8.5参照]
11.1.10 重篤な肝障害(6.2%)[8.7、9.3参照]
11.1.11 リンパ増殖性疾患(1.2%)
発熱、リンパ節腫大等が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
11.1.12 急性腎障害(頻度不明)
腎機能検査値(BUN、血清クレアチニン等)の悪化、尿量減少が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.8、9.1.9、9.2参照]
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 40%以上 | 10〜40%未満 | 10%未満 | |
| 過敏症注1) | 発疹、そう痒症 | 筋痛、紅斑、血清病注3) | |
| 発熱及びインフルエンザ様症状注2) | 発熱、熱感 | 頭痛、関節痛、悪寒 | 胸痛 |
| 血液 | 好中球減少、リンパ球減少、血清総蛋白減少、赤血球減少、ヘマトクリット減少、ヘモグロビン減少、高カリウム血症 | ||
| 精神神経系 | 感覚減退、筋硬直、めまい | ||
| 消化器 | 悪心、嘔吐、下痢、腹痛 | ||
| 肝臓 | AST増加、ALT増加、LDH増加 | Al-P増加、ビリルビン増加 | |
| 循環器 | 動悸、血圧上昇 | 血圧低下、頻脈 | |
| 血管 | 静脈炎 | ||
| その他 | CRP増加 | 脱力、疼痛、末梢性浮腫 | 耳鳴、呼吸困難、無力症、倦怠感、投与部位反応(疼痛、腫脹、紅斑) |
注1)副腎皮質ホルモン剤等の併用で軽減される。
注2)副腎皮質ホルモン剤、解熱剤及び抗ヒスタミン剤等の併用で軽減される。
注3)発熱、発疹、関節痛、筋肉痛などの症状を伴う。なお、これらの症状は自然に消退する場合があるが、副腎皮質ホルモン剤の投与で速やかに軽減される。
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