本剤は、緊急時に十分に措置できる医療施設において、癌化学療法及び肝動注化学療法に十分な経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。[「禁忌」、「原則禁忌」、「慎重投与」及び「適用上の注意」の項参照]
重篤な腎障害のある患者[腎障害を増悪させることがある。また、腎からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現することがある。]
本剤又は他の白金を含む薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人[「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]
肝細胞癌
シスプラチン100mgあたり70mLの生理食塩液を加えて溶解し、65mg/m2(体表面積)を肝動脈内に挿入されたカテーテルから、1日1回肝動脈内に20〜40分間で投与し、4〜6週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、投与量は症状等により適宜減量する。
本剤の投与時には腎毒性を軽減するために下記の処置を行うこと。
本剤投与前、1,000〜2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
本剤投与時から投与終了後、1,500〜3,000mLの適当な輸液を6時間以上かけて投与する。
本剤投与中は、尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与すること。
悪心・嘔吐、食欲不振等の消化器症状がほとんど全例に起こるので、患者の状態を十分に観察し、適切な処置を行うこと。
急性腎不全等の腎障害、骨髄抑制、肝機能障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(腎機能検査、血液検査、肝機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、減量、休薬、中止等の適切な処置を行うこと。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。なお、フロセミドによる強制利尿を行う場合は腎障害、聴器障害が増強されることがあるので、輸液等による水分補給を十分行うこと。
感染症、出血傾向の発現又は増悪に十分注意すること。
発熱が高頻度に起こるので、患者の状態を十分に観察し、適切な処置を行うこと。
小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与すること。[「7.小児等への投与」の項参照]
小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。
腎障害のある患者[腎機能が低下しているので、副作用が強くあらわれることがある。]
肝障害のある患者[肝細胞癌患者の多くは肝硬変等により代謝機能等が低下しているので、副作用が強くあらわれることがある。]
骨髄抑制のある患者[骨髄抑制を増悪させることがある。]
聴器障害のある患者[聴器障害を増悪させることがある。]
感染症を合併している患者[骨髄抑制により、感染症を増悪させることがある。]
水痘患者[致命的全身症状があらわれるおそれがある。]
高齢者[「5.高齢者への投与」の項参照]
小児[「7.小児等への投与」の項参照]
長期間使用している患者[腎障害、骨髄抑制等が強くあらわれ、遷延性に推移することがある。]
調製時
本剤を溶解する際、クロールイオン濃度が低い溶媒を用いる場合には、活性が低下するので必ず生理食塩液に溶解すること。
また、本剤を速やかに溶解するため湯浴(約50℃)で加温した生理食塩液を加えて強く振り混ぜる。なお、目視で完全に溶解したことを確認すること。
本剤を溶解する際、アミノ酸輸液、乳酸ナトリウムを含有する輸液を用いると分解が起こるので避けること。
本剤の溶解液は、アルミニウムと反応して沈殿物を形成し、活性が低下するので、使用にあたってアルミニウムを含む医療用器具を用いないこと。
本剤は、錯化合物であるので、他の抗悪性腫瘍剤とは混注しないこと。
投与時
本剤は、生理食塩液で溶解後、できるだけ速やかに投与すること。(参考:本剤を50℃で溶解後20℃で保存した実験において、6時間後までは結晶析出を認めなかったが、24時間後に結晶の析出を認めた。また、20℃未満の保存ではさらに短時間で結晶析出の可能性がある。)
本剤は、溶解後光により分解するので直射日光を避けること。
肝動脈内投与に際し、標的とする部位以外へ薬液が流入すると、胃・十二指腸潰瘍等が起こることがあるので、慎重に投与すること。また、カテーテル手技等により血管や臓器を損傷する場合があるため、十分に注意すること。
シスプラチンは、細菌に対する遺伝子突然変異誘発性が認められている。
マウスに腹腔内投与した実験で、肺腺腫及び皮膚腫瘍が発生したとの報告がある。
シスプラチンと他の抗悪性腫瘍剤との併用により、急性白血病(前白血病相を伴う場合もある)、骨髄異形成症候群(MDS)が発生したとの報告がある。
進行精巣腫瘍患者に対してシスプラチンを総量として400mg/m2以上で治療した場合には、精子濃度の回復は認められなかったとの報告がある。
本剤は生理食塩液に溶解した後、できるだけ速やかに使用すること。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 抗悪性腫瘍剤放射線照射 | 骨髄抑制を増強することがあるので、併用療法を行う場合は、患者の状態を観察しながら、減量するなど用量に注意すること。 | ともに骨髄抑制作用を有する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| パクリタキセル | 併用時、本剤をパクリタキセルの前に投与した場合、逆の順序で投与した場合より骨髄抑制が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、本剤をパクリタキセルの後に投与すること。 | 本剤をパクリタキセルの前に投与した場合、パクリタキセルのクリアランスが低下し、パクリタキセルの血中濃度が上昇する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| パクリタキセル | 併用により末梢神経障害が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長すること。 | ともに末梢神経障害を有する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| アミノグリコシド系抗生物質バンコマイシン塩酸塩注射用アムホテリシンBフロセミド | 腎障害が増強されることがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与すること。 | ともに腎障害を有する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| 頭蓋内放射線照射 | 聴器障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与すること。 | 機序は不明 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| アミノグリコシド系抗生物質バンコマイシン塩酸塩フロセミドピレタニド | 聴器障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与すること。 | ともに聴覚障害を有する。 |
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| フェニトイン | フェニトインの血漿中濃度が低下したとの報告があるので、併用療法を行う場合は慎重に投与すること。 | 機序は不明 |
<概要>
肝細胞癌患者を対象とした国内臨床試験の総症例104例における副作用及び臨床検査値異常の発現率は99.0%であり、主なものは食欲不振79.8%、悪心・嘔吐76.0%、発熱63.5%、倦怠感26.9%、白血球減少78.8%、好中球減少77.2%、血小板減少76.9%、AST(GOT)上昇56.7%、血色素減少51.0%、ALT(GPT)上昇45.2%、血清ビリルビン値上昇36.5%、血清アルブミン低下31.7%、血清総蛋白減少29.8%、LDH上昇27.9%、BUN上昇25.0%、血中クレアチニン上昇21.2%等であった。〔承認時〕
使用成績調査の323例における副作用及び臨床検査値異常の発現率は41.2%であり、主なものは発熱14.6%、悪心9.9%、食欲不振4.3%、肝障害3.7%、肝機能異常2.8%、嘔吐2.8%、腹痛2.5%、AST(GOT)上昇13.9%、ALT(GPT)上昇11.1%、血小板減少7.1%、血清ビリルビン値上昇5.9%、LDH上昇3.7%等であった。〔再審査終了時〕
急性腎不全(頻度不明)
急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、BUN、血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランス値等に異常が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。その他、血尿、尿蛋白、乏尿、無尿があらわれることがある。
汎血球減少等の骨髄抑制
汎血球減少(頻度不明)、貧血(1%未満)、白血球減少(20.8%)、好中球減少(18.7%)、血小板減少(23.2%)等があらわれることがあるので、頻回に血液検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行うこと。
血小板減少(1.4%)
本剤投与1〜4日後に急激な血小板減少があらわれることがあるので、本剤投与後は頻回に血液検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
ショック、アナフィラキシーを起こすおそれがあり、本剤を複数回投与した後に発現する場合もあるので、毎回観察を十分に行い、顔面浮腫、気管支痙攣、チアノーゼ、呼吸困難、胸痛、血圧低下等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
劇症肝炎(頻度不明)、肝機能障害(35.4%)、黄疸(1%未満)
AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、LDH、γ-GTP、血清ビリルビン値上昇等を伴う重篤な肝機能障害、劇症肝炎、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行うこと。その他、血清アルブミン、血清総蛋白、ICG値等に異常があらわれることがある。また、本剤の反復投与等により胆汁うっ滞があらわれるおそれがある。
肝・胆道障害(1%未満)
胆嚢炎、胆汁性嚢胞、肝膿瘍等の肝・胆道障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
心筋梗塞(1%未満)、狭心症(頻度不明)、うっ血性心不全(頻度不明)、不整脈(1%未満)
心筋梗塞、狭心症(異型狭心症を含む)、うっ血性心不全、不整脈(心室細動、心停止、心房細動、徐脈等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、胸痛、失神、息切れ、動悸、心電図異常等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肺結核(1%未満)
肺結核等の重大な感染症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合は投与を中止すること。
聴覚障害(1%未満)
高音域の聴力低下、難聴、耳鳴等があらわれることがある。また、シスプラチン静注時においては投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなり、特に1日投与量では80mg/m2以上で、総投与量では300mg/m2を超えるとその傾向は顕著となることが知られているので十分な観察を行い投与すること。
乳頭浮腫、球後視神経炎、皮質盲(すべて頻度不明)
乳頭浮腫、球後視神経炎、皮質盲等の視覚障害があらわれるおそれがあるので、異常が認められた場合は投与を中止すること。
脳梗塞(頻度不明)
脳梗塞があらわれるおそれがあるので、異常が認められた場合は投与を中止すること。
溶血性尿毒症症候群(頻度不明)
血小板減少、溶血性貧血、腎不全を主徴とする溶血性尿毒症症候群があらわれるおそれがあるので、定期的に血液検査(血小板、赤血球等)及び腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
溶血性貧血(頻度不明)
クームス試験陽性の溶血性貧血があらわれるおそれがあるので、異常が認められた場合には投与を中止すること。
間質性肺炎(頻度不明)
発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等を伴う間質性肺炎があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(頻度不明)
低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量の増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれるおそれがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等の適切な処置を行うこと。
消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔(すべて頻度不明)
消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行うこと。
急性膵炎(頻度不明)
急性膵炎があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、血清アミラーゼ値、血清リパーゼ値等に異常が認められた場合には投与を中止すること。
高血糖(1%未満)、糖尿病の悪化(頻度不明)
高血糖、糖尿病の悪化があらわれるおそれがあり、シスプラチン静注時においては昏睡、ケトアシドーシスを伴う重篤な症例も報告されているので、血糖値や尿糖に注意するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
横紋筋融解症(頻度不明)
横紋筋融解症があらわれるおそれがあるので、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
次のような症状があらわれた場合には、症状に応じて適切な処置を行うこと。
| 10%以上 | 10%未満 | 頻度不明注2) | |
| 消化器 | 食欲不振、悪心・嘔吐注3) | 下痢、便秘、上腹部痛、口内炎、腹痛、胃不快感、腹部不快感、腹部膨満、しゃっくり、十二指腸潰瘍 | 麻痺性イレウス、口唇炎 |
| 全身症状 | 発熱 | 倦怠感、頭痛、腹水 | |
| 過敏症 注4) | 発疹 | ほてり、発赤 | |
| 皮膚 | 脱毛症、 |
色素沈着障害 | |
| 筋・骨格系 | 背部痛 | ||
| 精神神経系 | 不眠症、浮動性めまい、血圧上昇、味覚異常、失見当識 | 末梢神経障害(感覚減退、麻痺等)、表出性言語障害、意識レベルの低下、痙攣、レルミット徴候 | |
| 呼吸器 | 鼻咽頭炎、咽頭炎、鼻出血、呼吸困難 | ||
| 循環器 | 動悸、頻脈、心電図異常、レイノー現象、血圧低下 | ||
| 電解質 | 血中ナトリウム異常、血中カリウム異常、血中塩化物異常 | 血中カルシウム異常、血中リン酸塩異常、血中マグネシウム異常、テタニー | |
| 泌尿器 | 尿中蛋白陽性、尿糖陽性 | 高尿酸血症 | |
| 線溶系 | フィブリン分解産物増加、プロトロンビン量増加 | ||
| その他 | 総蛋白減少 | 疼痛、全身浮腫、胸痛、脱水 |
注2)シスプラチン静注製剤で認められている副作用等。
注3)処置として制吐剤等の投与を行う。
注4)このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
動注用アイエーコール50mg 27678円/瓶
動注用アイエーコール100mg 53976円/瓶
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